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災害事例研究 No.31 【林業】

伐倒作業中に隣接する枯損木が何らかの原因で倒木し、その下敷きになった

災害発生の状況

 当日、現場代理人は午前7時30分から土場で作業打合せを行い、伐木作業3名、土場玉切り2名、グラップル運転2名、ブルドーザ運転1名に分かれ、それぞれが作業を行った。
 被災者はチェーンソーによる伐木作業に従事し、午前11時30分から休憩した。
 午後12時50分より作業を再開し、午前と同様の分担により作業が行われ、被災者は午後も伐木作業を行っていたが、その後、終業予定時刻になっても土場には戻らなかった。
 午後4時頃、被災者が土場に戻ってこないことを不審に思った同僚3名が、現場を確認に行った。被災者を発見した時、枯損木の下敷きになっていた。この時、被災者に対して呼びかけても反応はなく、意識のない状態で、手に触れたが冷たくなっていた。
 発見者は土場に戻り、現場代理人に報告し、直ちに、事業場に通報して救急車を手配した。
 現場では、同僚らが枯損木を取り除いたが、先端付近が3箇所で折れて4つに分断されており、被災者は別図②部分の枯損木が背後から激突した状態であり、前頭部の左側が接地している状態で、頭部から出血があり顔面にも創傷等がみられた。
 被災者の体の下には斧があり、近くに保護帽、伐根上とその傍にクサビが落ちていた。
 到着した救急隊が確認したところ呼吸と脈がなく、搬送先において頭蓋骨骨折、脳挫傷により、午後2時5分頃に死亡したものと断定。

災害発生の原因

 被災場所は、天然林で枯損木、倒木等が散見される。地山は笹丈の深い山地であるが、被災場所の密度は低い。
 被災当日は、およそ2m毎秒の微風であった。伐倒木に編心、腐食、つる絡み、かかり木等はなく、加害物の枯損木は既に先端が欠頂して枝がない。また、樹幹と根の腐食が著しく、伐倒木が接触した形跡はない。
 このような状況から推測すると、

  1. 現場の状況、枯損木など危険な木の事前調査・確認に基づく作業打合せが行われていないこと。
  2. 現場の巡視、点呼・応答などの方法により、安全作業の確認が行われていないこと。
  3. 樹幹や根の腐食の著しい枯損木を事前処理しないで、危険な枯損木に背を向けて作業したこと。

災害防止対策

  1. 現場責任者は、作業前打合せにおいて、作業手順の指示・指導と、伐倒木は落下物であり危険物であること、枯損木も落下物・危険物となり得ること、そのいずれもが加害物になり重篤災害が生ずることを各作業者に指導すること。
  2. 事業者から委任されている現場管理の責任者は、危険源の発見とその防止措置を指導するとともに、自らも適宜の巡視等によりリスクファクターとなる枯損木・伐倒木などの安全な伐木方法、退避の確実な実施などを指導すること。
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  3. 伐採に当たっては、伐倒木の状況、隣接木、つる絡み、枝絡み等を調査した上で安全・確実な伐木方法で作業すること。この場合、「林業・木材製造業労働災害防止規程」に明示されている作業方法の基準等に基づき、危険な枯損木処理、退避路作設などの①準備作業、伐木などの②本作業、③後確認、を作業のステップに応じて安全作業を励行すること。
  4. 事業者または現場責任者(職長・班長等)は、適宜に現場を巡視し、標準作業から外れた問題のある作業について、安全な作業手順の教育・指導、監督・指示などを行い、問題点の改善を行うこと。

伐採箇所の事前踏査
 関係者は、伐採着手に先立って、伐採箇所の事前踏査を 行い、必要な情報の把握に努めること。
 次の事項について調査して、作業の段取りをします。
① 山割り、作業手順を立てるのに必要なもの
② 作業上注意を要する箇所、安全上必要な措置
③ 作業上注意を要する立木、その伐採方法
④ 準備する必要のある機械、用具など

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