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災害事例研究 No.181 【林業】

広葉樹を伐倒するため追い口を入れたところ、突然裂け上がって激突

被災者は、作業の支障となるネムノキを伐倒するため、チェーンソーを用いて受け口を作った後、追い口を入れたところ、突然裂け上がり、裂け上がったネムノキが落下し、被災者の頭部に激突、その下敷きとなった。

災害の発生状況

 被災者は、同僚2人とスギ人工林の皆伐作業において、元請の責任者から作業場所の指示を受け、それぞれの持ち場に分かれてチェーンソーによる伐木造材作業を行っていた。被災者は林道沿にあるネムノキ(胸高直径約40cm、樹高約17m)が近くにあるスギ立木の伐木作業に支障になると考えて、伐倒することとした。受け口を作った後、追い口を入れたところ、追い口の切込み箇所から縦に2m程裂け上がり、幹が折れて、折れた幹が被災者の頭部に激突し、その下敷きとなった。
 近くにいた元請の責任者が異常に気づいて現場に駆け付けたところ、裂けて折れた幹の下敷きなって倒れている被災者を発見した。
被災者はチェーンソーの伐木等作業の特別教育を修了して一年足らずであった。また、受け口の水平切りや追い口が切り込みすぎていた。

災害の発生原因

  1. 伐木等作業の経験が浅い者に裂け易い木の伐倒をさせたこと、受け口や追い口が正しく作られていなかったこと。
  2. 裂け易い木に対する裂け止め等の措置を行っていなかったこと。
  3. 作業計画作成のため、事前に作業地の調査を行い、裂け易い木を把握して、その作業方法を定めていなかったこと。

災害の防止対策

  1. 伐木等初級者(伐木等作業の特別教育修了者で伐木等作業に従事した期間が3年未満の者)には、裂け易い木等困難木の伐倒を行わせないように努め、行わせる場合には、作業指揮者等の直接の指導の下で伐倒させるようにすること。
  2. 受け口の深さは伐根直径の4分の1以上にし、受け口の下切りと斜め切りの終わりの部分を一致させ、この会合線は水平とすること、追い口切りの切り込みの深さは、つるの幅が伐根直径の10分の1程度残るようにし、切り込み過ぎないことなど、基本的な伐倒方法により伐倒すること。
  3. 裂け易い木は、伐倒前に、ロープ等を用いて追い口の上部に5回程度強く巻きつけるか、追いづる切りにより伐倒すること。(裂け易い木は、ホウノキ、ナラ、カシ、ネムノキ、ケンポナシ等がある)
  4. 作業計画を作成するため、リスクアセスメント等を実施し、作業地の事前調査を行い、裂け易い木についてはテープ等で標示し、作業計画に裂け易い木の伐倒方法を定めること。
  5. 作業計画に基づく作業を行わせるため、作業指揮者を選任し、裂け易い木の伐倒を指揮すること。

〈チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン(抜粋)〉
6 作業計画等
(1)調査及び記録
事業者は、伐木等作業を行う場合、伐木等作業を行う範囲を対象に、チェーンソーを用いて伐木の作業を行う場合には表1、チェーンソーを用いて造材の作業を行う場合には表2に示す事項を含め調査し、その結果を記録すること。
なお、当該調査及び記録には、別添1に示す作業計画の標準的な様式を活用することが可能であること。また、伐木等作業、車両系木材伐出機械を用いる作業等の調査及び記録をとりまとめ、一の様式にすることは可能であること。
(2)リスクアセスメント及びその結果に基づく措置の実施等
伐木等作業については、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)「以下「法」という。」第28条の2第1項に基づき、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成18年3月10日危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第1号)を踏まえ、リスクアセスメントを行い、その結果に基づいて、労働安全衛生法令に規定された措置を実施するほか、労働者の危険又は健康障害を防止するために必要な措置を講ずるよう努めること。
(3)作業計画
ア 事業者は、伐木等作業を行う場合には、あらかじめ、上記(1)を踏まえ、チェーンソーを用いて伐木の作業を行う場合には表3、チェーンソーを用いて造材の作業を行う場合には表4に示す事項を含む作業計画を定めること。なお、作業計画の標準的な様式は、別添1であること。
上記の作業計画は、現場の実態等を踏まえ、伐木等作業に加え、車両系木材伐出機械その他の作業を行うために定める作業計画と合わせて、一の様式とすることも可能であること。
なお、上記(2)に基づく、リスクアセスメント及びその結果に基づく措置については、上記の作業計画を定める場合にも活用できること。
イ 事業者は、上記アにより定めた作業計画に基づき伐木等作業を行うこと。
ウ 上記アにより定めた作業計画について、事業者は労働者に確実に周知を行うこと。なお、例えば、伐木等作業を開始する前に、朝礼等の安全衛生に関する打合せを活用し、作業計画の説明を行う等の方法があること。
(4)作業指揮者
事業者は、伐木等作業を行う場合、上記(3)により定められた作業計画に基づく作業の指揮を行わせるために、作業指揮者を選任すること。
(5) 略
(表1、表2、表3、表4及び別添1は略)

〈林業・木材製造業労働災害防止規程〉
(伐木等初級者に対する配慮)
第47条 会員は、第46条に定める伐木等初級者に対して、次に掲げる事項について配慮するよう努めること。
(1)~(3) 略
(4) 第3節第3款に定める困難木の伐倒を行わせないように努めること。ただし、伐木等指導者の直接の指導の下で行う場合はこの限りでない。
2 略

(裂け易い木の伐倒)
第77条 会員は、第48条の調査の結果、伐採予定の森林内に第72条第3号の裂け易い木がある場合は、作業計画に記載し、伐採着手前に当該木にテープ等により標示を行っておくとともに、作業者に対し次の事項を行わせなければならない。
(1) 必要に応じ、伐倒前に、ワイヤロープ、麻ロープ等を用いて、当該木の追い口の上部に5回程度強く巻き付けておくこと。
(2) 裂け易い木の伐倒方法は、追いづる切りによること。
2 裂け易い木とは、ホウノキ、ナラ、カシ、サクラ、ミズキ、クルミ、シイ、ウリハダカエデ、アベマキ、ハマセンダン、シオジ、セン、ケヤキ、クリ、キハダ、ミズメ、ウダイカンバ、ヤチダモ、ハンノキ、カラスザンショウ、ネムノキ、ケンポナシ等の樹木をいう。