災害事例研究 No.33 【林業】
グラップルでかかり木を倒した際に、倒れる方向にいた被災者にかかり木が当たった
災害発生の状況
- 当日、被災者は同僚と分収育林の伐採作業に従事。午後1時30 分頃、数日前に発生したかかり木処理のため、同僚はグラップルを搬送の上、かかり木の右側に停車させた。
- 同僚は、グラップルでかかり木処理を行う前に、グラップルの運転席から、グラップルが移動してきたことや、グラップル処理により、かかり木が倒れる方向(グラップルの前方)を見回したが、このとき被災者は見えなかった。
- このため、同僚はグラップルで当該かかり木(樹高28.5 m、胸高直径32㎝)をグラップルでつかみ、元口から約6mの箇所を持ち上げようとしたが、元口が持ち上がらなかったので、再度グラップル部を開いてかかり木の下側から元口を持ち上げたところ、かかり木が倒れ始め、そのとき、倒れる方向に被災者がいるのを発見し、「オー」と叫んだ。
- 被災者は、グラップルのほうを振り向いたようであったが、かかり木がそのまま倒れ、被災者を直撃した。
災害発生の原因
- 伐木造材機械による作業を行う場合の危険区域内に被災者がいたにもかかわらず、作業者の所在を確認しないまま作業を行ったこと。
- グラップルの運転者と作業者の連携・合図を確実に行わなかったこと。
災害防止対策
- 伐木造材機械による作業を行う場合の危険区域内に、作業者を立ち入らせてはならない。
- 伐木造材機械の運転者は、「周りヨシ!」などと「指差し呼称」を確実に行い、作業者がいないことを確認すること。
- 重機を用いてかかり木処理を行う場合、または重機にウインチが付いている場合は、ガイドブロックも併用し、安全で確実な方法でかかり木処理を行うことが望ましい。 なお、かかり木処理に当たっては、「かかり木処理の作業における労働災害防止のためのガイドライン」(平成14年3月28日付け基安安発第0328001号)に基づくこと。
[参考]
- 伐木造材機械作業に係る立入禁止について
① 作業中の伐木造材機械又は扱っている材に接触するおそれのある箇所
② 伐倒作業中は、運転席から伐倒する木の高さの2倍を半径とする円の範囲内
③ 造材作業中は、運転席からアーム・ブームを伸ばした距離の2倍を半径とする円の範囲内と材を送る方向 - 合図
① 伐木造材機械による作業を行う場合には、一定の合図を定め、運転者及び作業者に周知させ、この合図を行わせること。
② なお、プロセッサ等のオペレーターは機械始動時には、クラクションを鳴らして、他の作業者に注意を促すこと。 - 指差し呼称
① オペレーターは、危険区域内に他の作業者や機械がいないかなど、周囲の確認のために指差し呼称を行う。
② 作業者は、退避したとき危険区域外にいることを確認する指差し呼称を行う。