災害事例研究 No.182 【林業】
集材作業中、フォワーダが路肩から外れて転落した
被災者は、フォワーダでトドマツを土場まで運搬した後、木寄せ場所へ後進走行で戻る途中、緩いカーブをクローラが路肩から外れ、路肩から斜面を約190m転落し、被災者は途中で運転席から投げ出された。
災害の発生状況
被災者は、フォワーダを用いて間伐したトドマツの集材作業を行っていた。木寄せ場所で同僚が運転する木材グラップル機からトドマツをフォワーダ(車両重量16トン)に積み、約1km離れた土場まで作業道を使って運搬した。その後、再度、土場から木寄せ場所まで戻る途中で前進走行から後進走行に転換し、約135m進んだ緩いカーブにおいて、フォワーダのクローラが路肩を外れ、フォワーダは傾斜約40度の斜面を約190m転落し、被災者は備えられたシートベルトを使用していなかったため、途中で運転席から投げ出され外傷性ショックにより死亡した。
転落箇所の作業道の幅員は、クローラ幅2.5mに対して約3.2mであった。また、作業道はフォワーダの進行方向に対して約7度の下り勾配で、また路肩側に若干傾斜していた。
被災者は走行集材機械に係る特別教育を受講していなかった。
災害の発生原因
- 被災者は、走行集材機械の運転の業務に係る特別教育を修了していなかったこと。
- 路肩からの転落の危険のおそれがある緩い曲線カーブとなっている箇所を後進走行したこと。また、誘導者を配置していなかったこと。
- シートベルトを使用していなかったこと。
- 走行集材機械の運行経路等の状況を踏まえた作業計画を作成していなかったこと及び作業指揮者を選任していなかったこと。
災害の防止対策
- 事業者は作業者を走行集材機械の運転の業務に就かせるときは、労働安全衛生規則第36条第6号の3に基づく運転の業務に係る走行集材機械の特別教育を行うこと。
- 極力後進走行することがないよう終点等に車回しを設けた路線を計画すること。また、作業道の曲線カーブ作設に当たっては、雨天や凍結時のスリップ事故を防止するため、カーブ谷側を高くすること。さらに、転落の危険のおそれがある箇所で走行集材機械を用いて作業を行う際は、誘導者を配置して、車両の誘導を行うこと。
- フォワーダの走行中は備えられたシートベルトを使用すること。
- 作業地の事前の調査を行い、リスクアセスメント等を実施し、作業計画を作成するとともに、作業の指揮者を定め、その者に作業計画に基づく作業の指揮を行わせること。
〈労働安全衛生規則〉
(特別教育を必要とする業務)
第36条
1~6 略
6の3 走行集材機械(車両の走行により集材を行うための機械であつて、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるものをいう。)の運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務
(調査及び記録)
第151条の88 事業者は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、当該車両系木材伐出機械の転落、地山の崩壊等による労働者の危険を防止するため、あらかじめ、当該作業に係る場所について地形、地盤の状態等並びに伐倒する立木及び取り扱う原木等の形状等を調査し、その結果を記録しておかなければならない。
(作業計画)
第151条の89 事業者は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、あらかじめ、前条の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。
2 前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない。
一 使用する車両系木材伐出機械の種類及び能力
二 車両系木材伐出機械の運行経路
三 車両系木材伐出機械による作業の方法及び場所
四 労働災害が発生した場合の応急の措置及び傷病者の搬送の方法
3 略
(作業指揮者)
第151条の90 事業者は、車両系木材伐出機械(伐木等機械を除く。)を用いて作業を行うときは、当該作業の指揮者を定め、その者に前条第1項の作業計画に基づき作業の指揮を行わせなければならない。
(転落等の防止)
第151条の92
1 略
2 事業者は、路肩、傾斜地等で車両系木材伐出機械を用いて作業を行う場合において、当該車両系木材伐出機械の転倒又は転落により労働者に危険が生ずるおそれのあるときは誘導者を配置し、その者に当該車両系木材伐出機械を誘導させなければならない。
3 略
第151条の93 事業者は、路肩、傾斜地等であつて、車両系木材伐出機械の転倒又は転落により運転者に危険が生ずるおそれのある場所においては、転倒時保護構造を有し、かつ、シートベルトを備えたもの以外の車両系木材伐出機械を使用しないよう努めるとともに、運転者にシートベルトを使用させるように努めなければならない。
〈林業・木材製造業労働災害防止規程〉
(転倒時保護)
第98条 会員は、傾斜地等であって、車両系木材伐出機械の転倒又は転落により運転者に危険が生ずるおそれのある場所においては、転倒時保護構造を有し、かつ、シートベルトを備えたものを使用するように努めるとともに、シートベルトを備えた車両系木材伐出機械を使用する場合には、作業者にシートベルトを使用させなければならない。
(走行路の確保)
第133条 会員は、走行集材機械の走行路の作設又は維持管理の作業を行うときは、作業者に次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
(1)~(5) 略
(6) 走行路の終点に車回しを設け、原木を積載して集材する走行は前進走行を確保するようにすること。
(7)~(8) 略