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災害事例研究 No.183 【林業】

伐倒したアカマツが近くで作業していた同僚に激突

伐倒者から目視できない斜面下方で作業していた被災者に伐倒する旨近づいて伝えたが、十分に退避していなかった被災者に伐倒木が激突

災害の発生状況

 皆伐作業現場において、被災者は、同僚2人(チェーンソーによる伐倒作業(A)と集運材作業をそれぞれ担当)とともに、チェーンソーを使って伐倒木の枝払い作業に従事していた。
 同僚Aは、アカマツ(胸高直径約30cm、樹高約25m)を伐倒しようとしたところ、伐倒方向の斜面下方にて被災者が作業を行っていた。伐倒方向の斜面は、緩傾斜から急傾斜となっていることから、被災者が立入禁止区域から退避したことを目視にて確認することができないため、同僚Aは、事前に作業者に近づき、「こちらに伐倒するから」と声かけしたところ、被害者が手で合図を返した。
 同僚Aは、被災者が退避したものと考え、当該アカマツを伐倒したところ、被災者に伐倒木の枝部が激突した。

災害の発生原因

  1. 伐倒の合図(応答合図を含む。)を定めていなかったこと、また、指差し呼称や無線機の使用を行っていなかったこと。
  2. 立入禁止区域外の安全な場所に被災者が退避したことを確認しないまま伐倒したこと。
  3. 作業開始前に、適切な山割り、上下作業の禁止についての指示が行われていなかったこと。
  4. 作業計画の作成等が行われていなかったこと。

災害の防止対策

  1. 呼子等による伐倒合図(他の作業者の応答合図を含む。)を定めること。
  2. 伐倒木の樹高の2倍相当の半径とする立入禁止区域外の安全な場所に他の作業者が退避したことを確認して、伐倒すること。
  3. 作業前にミーテイングを行い、作業者間でのコミュニ-ケーションを図ること。
  4. 事前に作業地の調査を行い、リスクアセスメント等を実施し、無線機の導入の検討、上下作業とならない山割りや合図、作業手順を含む作業計画を作成するとともに、作業の指揮者を定め、その者に作業計画に基づく作業の指揮を行わせること。

〈労働安全衛生規則〉
(伐倒の合図)
第479条 事業者は、伐木の作業を行なうときは、伐倒について一定の合図を定め、当該作業に関係がある労働者に周知させなければならない。
2 事業者は、伐木の作業を行う場合において、当該立木の伐倒の作業に従事する労働者以外の労働者(以下この条及び第481条第2項において「他の労働者」という。)に、伐倒により危険を生ずるおそれのあるときは、当該立木の伐倒の作業に従事する労働者に、あらかじめ、前項の合図を行わせ、他の労働者が避難したことを確認させた後でなければ、伐倒させてはならない。
3 前項の伐倒の作業に従事する労働者は、同項の危険を生ずるおそれのあるときは、あらかじめ、合図を行ない、他の労働者が避難したことを確認した後でなければ、伐倒してはならない。

(立入禁止)
第481条 事業者は、造林、伐木、かかり木の処理、造材又は木寄せの作業(車両系木材伐出機械による作業を除く。以下この章において「造林等の作業」という。)を行っている場所の下方で、伐倒木、玉切材、枯損木等の木材が転落し、又は滑ることによる危険を生ずるおそれのあるところには、労働者を立ち入らせてはならない。
2 事業者は、伐木の作業を行う場合は、伐倒木等が激突することによる危険を防止するため、伐倒しようとする立木を中心として、当該立木の高さの2倍に相当する距離を半径とする円形の内側には、他の労働者を立ち入らせてはならない。
3 (略)

〈チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン(抜粋)〉
6 作業計画等
(1)調査及び記録
事業者は、伐木等作業を行う場合、伐木等作業を行う範囲を対象に、チェーンソーを用いて伐木の作業を行う場合には表1、チェーンソーを用いて造材の作業を行う場合には表2に示す事項を含め調査し、その結果を記録すること。(表1略)
(2)リスクアセスメント及びその結果に基づく措置の実施等
伐木等作業については、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)「以下「法」という。」第28条の2第1項に基づき、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成18年3月10日危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第1号)を踏まえ、リスクアセスメントを行い、その結果に基づいて、労働安全衛生法令に規定された措置を実施するほか、労働者の危険又は健康障害を防止するために必要な措置を講ずるよう努めること。

(3)作業計画
ア 事業者は、伐木等作業を行う場合には、あらかじめ、上記(1)を踏まえ、チェーンソーを用いて伐木の作業を行う場合には表3、チェーンソーを用いて造材の作業を行う場合には表4に示す事項を含む作業計画を定めること。(表3略)(以下、略)
イ 事業者は、上記アにより定めた作業計画に基づき伐木等作業を行うこと。
ウ 上記アにより定めた作業計画について、事業者は労働者に確実に周知を行うこと。なお、例えば、伐木等作業を開始する前に、朝礼等の安全衛生に関する打合せを活用し、作業計画の説明を行う等の方法があること。
(4)作業指揮者
事業者は、伐木等作業を行う場合、上記(3)により定められた作業計画に基づく作業の指揮を行わせるために、作業指揮者を選任すること。
(5) (略)