災害事例研究 No.35 【林業】
急傾斜地で、かかり木をフェリングレバーで外そうとしてバランスを失い転倒。落ち掛かった当該かかり木が足を直撃し、骨折した
急傾斜地で間伐作業中に、隣接する2本の立木の間にかかり木となった伐倒木を外そうと、元口付近にフェリングレバーをセットし回転させていたところ、当該かかり木が落下する際に、フェリングレバーが反動。このため身体のバランスを崩して転倒し、投げ出した足を落ち掛かった当該かかり木に直撃された。
災害発生の状況
- 林地の傾斜約30度、林齢55年生のスギ、ヒノキ人工林の間伐作業において、胸高直径38cm、樹高25mのスギ立木を林地傾斜に対して真横方向に伐倒したところ、伐倒方向の延長線からやや下方に8m、やや上方に13 m離れて生立する2本のヒノキの間にかかり木となってしまった。
- かかり木となったスギ樹冠部の多くが手前のヒノキの幹に上からもたれかかるように、また、先端部分は離れた位置のヒノキ樹冠を抑圧する形になっていたので、伐根に残ったつるを谷側から切り進め、山側に4cm残して支持点とし、フェリングレバーのフックを伐倒木元口の林地側にセット、斜面上方からレバーを手前に引いて回転させようとした。
- 二度三度試みてもフックが滑る等で容易に動かせないため、フックを深く打ち込み、反動をつけてさらに力を加えたところ、不意にかかり木が回転し落下し始めた。その際、外そうとして外れなかったレバーの動きに気を取られ、滑って尻もちをついて差し出した左足の上にかかり木が落ち掛ったものである。
災害発生の原因
- フェリングレバーで回転の力を加える際には、押す方法が基本であり、今回は誤って引く方向に使用したこと。しかも、足元が不安定な急傾斜地であったこと。かかり木の枝がヒノキの樹幹にもたれるように押しつけられていたことから、それを解放する方向に回転させようとしたものであるが、そのままの方向にレバーを押して回転させることも選択できるものである。
- 上記と関連するが、造材作業は斜面の上側に位置して実施しなければならないとする鉄則にとらわれて、かかり木の下側に立っての作業(フェリングレバーを押す)については考慮しなかったこと。仮に、下側に位置して当該作業をしたとしても、伐倒木はかかられた手前のヒノキに支えられて転落するおそれはない。
- かかり木が回転し始めたところで、深く打ち込んでいたフックを外すことに気をとられ、退避行動に遅れを生じたこと。
災害防止対策
- 木回し用具は押して使用するのが原則であり、事例のように引いた場合には、てこ棒の動きで身体の行動を制約されかねないので、注意すること。
- フェリングレバー等でかかり木を回す際には、残ったつるを切って回転を容易にする必要があるが、対象木の大きさ、回転の方向、回そうとする角度等を勘案し、大径木では樹芯に近い位置に回転の軸芯となるつるを切り残すことが有効である。
- 回転の際に、より大きなモーメントを得るため、鉄パイプを加工してレバーに差込み装着し、ウデの長さを確保することも有効である。
- 木回し用具のフックを深く打ち込み過ぎた場合に、タイミングよく外れないことがあるが、そのままでも特に支障はないので、外す行為に拘らずに放置し、退避優先とすること。
- かかり木の発生を余儀なくされそうな条件下にあるだけに、伐倒方向を正確にするため、重心位置の見極め、受け口の方向性の確保等に慎重を期す必要がある。