災害事例研究 No.184 【林業】
木材グラップル機でかかり木処理中に、かかり木が突然外れ、被災者に激突
被災者は同僚の伐倒作業の補助作業に従事していたが、伐倒木がかかり木となり、木材グラップル機のウインチで牽引処理の作業中に、突然、かかり木が落下し、退避していた被災者に激突した。
災害の発生状況
被災者は、同僚1人と伐倒作業に従事していた。同僚がチェーンソーによる伐倒作業を行い、被災者は伐倒予定木周辺の雑灌木の刈払い、退避路の整備等の補助作業を行っていた。
同僚が、スギ(胸高直径45cm、樹高21m)を伐倒するため、被災者へ退避を指示し、同スギを斜面下方向へ伐倒したところ、伐倒方向にあったケヤキの枝にかかり木となった。同僚は、近くで作業していた木材グラップル機を使用して、かかり木の処理を行うこととした。同機のウインチで牽引するため、かかり木にワイヤロープを取り付け、牽引の準備作業が終わったところ、突然、かかり木が外れ、落下し、退避していた被災者に激突した。
なお、被災者は林業に関する経験が浅かった。
災害の発生原因
- かかり木の処理を行うに当たり、作業に危険が及ぼす恐れのあるところから退避していなかったこと。(かかり木から安全に退避できる場所を退避場所としていなかったこと。)
- かかり木の処理状況に注意を払っていなかった。
- かかり木処理の方法に関して作業計画を作成していなかった。
災害の防止対策
- かかり木の処理をグラップル等のウインチを利用して行う場合は、ガイドブロックを用いて運転者以外の方向にかかり木を安全に引き倒すことにより安全に処理をすること。
- 退避させる場合は、かかり木の処理による危険が及ばないところに退避させること。
- かかり木が発生した後、当該かかり木を一時的に放置する場合を除き、当該かかり木の処理の作業を終えるまでの間、かかり木の状況について常に注意を払うこと。
- 伐倒作業を行う場合は、事前調査に基づく作業計画を作成し、作業指揮者を選任して作業計画に基づく作業指揮を行わせること。
〈労働安全衛生規則〉
(立入禁止)
第481条 事業者は、造林、伐木、かかり木の処理、造材又は木寄せの作業(車両系木材伐出機械による作業を除く。以下この章において「造林等の作業」という。)を行っている場所の下方で、伐倒木、玉切材、枯損木等の木材が転落し、又は滑ることによる危険を生ずるおそれのあるところには、労働者を立ち入らせてはならない。
2 (略)
3 (略)
〈チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン(抜粋)〉
6 作業計画等
(3)作業計画
ア 事業者は、伐木等作業を行う場合には、あらかじめ、上記(1)を踏まえ、チェーンソーを用いて伐木の作業を行う場合には表3、チェーンソーを用いて造材の作業を行う場合には表4に示す事項を含む作業計画を定めること。なお、作業計画の標準的な様式は、別添1であること。
(略)
イ 事業者は、上記アにより定めた作業計画に基づき伐木等作業を行うこと。
ウ 上記アにより定めた作業計画について、事業者は労働者に確実に周知を行うこと。なお、例えば、伐木等作業を開始する前に、朝礼等の安全衛生に関する打合せを活用し、作業計画の説明を行う等の方法があること。
表3 チェーンソーを用いて伐木の作業を行うために定める作業計画に含める事項
7 チェーンソーを用いて行う伐木の作業
(5)かかり木の処理
かかり木の処理の作業を行う場合には、別添2に示した方法により、安全に処理すること。
「別添2 かかり木処理の作業における安全の確保に関する事項」
2 具体的な措置
(2)安全な作業の徹底
ア 確実な退避の実施等
(ア)退避場所の選定等
かかり木の発生後速やかに、当該かかり木の場所から安全に退避できる退避場所を選定すること。
(イ)かかり木の状況の監視等
かかり木が発生した後、当該かかり木を一時的に放置する場合を除き、当該かかり木の処理の作業を終えるまでの間、かかり木の状況について常に注意を払うこと。
(ウ)確実な退避の実施
かかり木の処理の作業を開始した後、当該かかり木がはずれ始めたときには、上記(ア)で選定した退避場所に労働者を速やかに退避させるようにすること。
また、かかり木の処理の作業を開始する前において、当該かかり木により労働者に危険が生ずるおそれがある場合についても、同様に退避させるようにすること。
イ かかり木の速やかな処理(略)
ウ 適切な機械器具等の使用(略)