災害事例研究 No.37 【林業】
玉切材を林内運搬車より傾斜した山土場に降ろす際、転がった玉切材に挟まれる
被災者は、集材した玉切材を林内運搬車にて、山土場に集積する作業を1人で行っていた。
傾斜した土場の下方に立ち、運搬車の荷台より玉切材を降ろすための作業(作業車より降ろす状態か、降ろした後での材の調整中かは不明)を、トビを使用して行っていたが、転がった玉切材(直径35cm、長さ4m、重さ約400Kg)と既に集積されていた玉切材との間に挟まれて被災した。
災害発生の状況
- 被災者はスギ人工林内において、同僚と2人で間伐作業に従事していた。
- 被災当日は、前回よりの間伐作業を朝から行っており、同僚が伐木作業を、被災者は林内運搬車(積載能力1.2t)により集材及び集積作業を行っていた。(被災者が班長として作業を指揮)
- 伐木作業場所と集積場所は約360mほど離れており、被災者は集積場所において集材した玉切材の集積を行っていた。集積場所では、平土場として使える部分はすでに玉切材が集積(2段)されており、そのために傾斜(傾斜角約20 度)した被災場所を土場として選定した。
以下、推測 - 傾斜土場の路肩より3mほど下の立木を転び止めとして玉切材の集積を行っていたが、路肩部分まで積み上がってきたため、運搬車より降ろす際に傾斜地の下方からトビを使用して玉切材を引っ張ろうとした。
- その際、下にあった玉切材の上を引っ張った材が転がり、既に積んであった玉切材との間に頭部と胸部を挟まれた。
- 作業を終えた同僚が被災場所に戻ってきて発見し、すぐに救急車を手配し病院に搬送したが、死亡(圧死)が確認された。
災害発生の原因
今回の災害は、発生状況が単純であるために、ややもすると背後にある原因を見逃しがちになるものである。直接原因は、傾斜地の下方に入ってトビを使用した「人為的なミス」と思われるが、その背後にある「真の原因」について、一例として「なぜなぜ分析」を行って検討した結果と対策を示す。(なぜなぜ分析については「林材安全2012年5月号P20参照」)
まとめ
今回の災害の直接原因は、傾斜した土場の下方で玉切材を引っ張るためにトビを使用しことによる、「人為的なミス」であるが、真の要因として
- 作業計画時の作業場所の事前調査が十分であったか
- 事前調査に基づく、作業方法の決定と作業機械の選定が行われたか
- 単独作業を継続する場合の安全確保の方法が考慮されていたか
等の管理的な側面の存在が考えられる。
災害を未然に防止するには、事前の作業計画とリスクアセスメントが重要となる。また、事前の計画を現地で安全に実行するためには、「KY活動」や「指差し呼称」などの現地での安全活動が欠かせず、今回の災害はこれらのことを再確認させる災害事例である。