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災害事例研究 No.186 【林業】

かかられた木を伐倒中にかかり木が落下し被災者に激突

チェーンソーを使ってスギを伐倒したところ、ヒノキにかかり木となってしまったため、かかられているヒノキを伐倒しようと追い口を入れたところ、かかり木(スギ)が落下し、被災者に激突した。

災害の発生状況

 被災者は、同僚1人とスギ・ヒノキ人工林の間伐作業に従事していた。チェーンソーを用いてスギ立木(伐根直径約50cm、樹高約 28m)を斜面上側(傾斜約20 度)へ伐倒したところ、倒れる方向が変わり、約16m 離れたヒノキ(樹高約26m)にかかり木となってしまったため、かかり木処理として、かかられているヒノキを伐倒することとした。
 被災者がかかられているヒノキに受け口を作った後、追い口を入れたところ、突然、かかり木(スギ)が落下し、被災者に激突した。
 同僚は、現場が携帯電話の不通エリアであったことから、下山し救助の要請を通報した。被災者は、ドクターヘリで病院へ搬送されたが、死亡が確認された。

災害の発生原因

  1. かかり木処理において、かかられた木を伐倒しようとしたこと。
  2. かかり木となったスギの伐倒において、基本的な伐倒方法(受け口や追い口、つる(切り残し)により行われておらず、倒れる方向が変わったこと。
  3. 伐木の方法やかかり木処理の方法を含む伐木等作業に関する作業計画が作成されていなかったこと。

災害の防止対策

  1. かかり木処理において、かかられた木の伐倒を行わないこと。
  2. 立木の伐倒に当たっては、受け口及び追い口を正しく作り、適当な幅のつる(切り残し)を残すようにすること。
  3. かかり木処理において、かかり木が胸高直径20cm 以上である場合は、使用可能な車両系木材伐出機械あるいはチルホール等のけん引具等を使用すること。また、かかり木の処理作業は、2人以上の組となるようにすること。
  4. 作業地の事前調査を行い、伐木の方法やかかり木処理の方法を含む作業計画を作成し、当該作業の指揮者を定め、作業指揮者は、作成した作業計画に基づく作業の指揮を行うこと。

〈労働安全衛生規則〉
(かかり木の処理の作業における危険の防止)第478条 (略)
2 事業者は、前項の規定に基づき労働者にかかり木の処理を行わせる場合は、かかり木が激突することによる危険を防止するため、かかり木にかかられている立木を伐倒させ、又はかかり木に激突させるためにかかり木以外の立木を伐倒させてはならない。
3 (略)
(伐木作業における危険の防止)
第477条 事業者は、伐木の作業(伐木等機械による作業を除く。以下同じ。)を行うときは、立木を伐倒しようとする労働者に、それぞれの立木について、次の事項を行わせなければならない。
一及び二 (略)
 三 伐倒しようとする立木の胸高直径が20 センチメートル以上であるときは、伐根直径の4分の1以上の深さの受け口を作り、かつ、適当な深さの追い口を作ること。この場合において、技術的に困難である場合を除き、受け口と追い口の間には、適当な幅の切り残しを確保すること
2 (略)

〈チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン(抜粋)〉
「別添2 かかり木処理の作業における安全の確保に関する事項」
1 基本的な考え方
(略)
① ガイドラインの6の(1)を踏まえ、かかり木に係る事項についても調査及び記録を行い、かかり木の処理の作業の方法及び順序等について、ガイドラインの6の(3)に基づく作業計画を定めること。
② 適切な機械器具等の使用、労働者の確実な退避等安全な作業を徹底すること。
③ かかり木を一時的に放置せざるを得ない場合における講ずべき措置を徹底すること。
かかり木の処理の作業における禁止事項を徹底すること。
なお、かかり木の処理の作業については、速やかな処理を急ぐばかりに労働者が単独で、かかり木処理の作業における禁止事項等を行うなどの危険な作業を行うことがないように徹底することはもとより、2人以上の労働者でかかり木の処理の作業を行うことなどにより、安全に作業を行うことを優先することとする。
2 具体的な措置
(1)かかり木に係る調査及び記録(略)
(2)安全な作業の徹底
ア 確実な退避の実施等 (略)
イ かかり木の速やかな処理 (略)ウ 適切な機械器具等の使用
(ア)車両系木材伐出機械等を使用できる場合(略)
(イ)上記(ア)以外の場合
① かかっている木の胸高直径が20 センチメートル以上である場合又はかかり木が容易に外れないことが予想される場合
けん引具等を使用して、かかり木をはずすようにすること。
また、けん引具等を使用する場合には、ガイドブロック等を用い、安全な方向に引き倒すようにするとともに、かかっている木の樹幹にワイヤロープを数回巻き付け、けん引具等によりけん引したときに、かかっている木が回転するようにすること。
② (略)
エ かかり木の処理の作業における禁止事項の遵守かかり木の処理の作業においては、次に掲げる 事項を行ってはならないこと。(以下、略)
(ア)かかられている木の伐倒
(イ)かかり木に激突させるためにかかり木以外の立木の伐倒(浴びせ倒し)
(ウ)かかっている木の元玉切り
(エ)かかっている木の肩担ぎ
(オ)かかり木の枝切り