災害事例研究 No.39 【林業】
伐倒木が隣接木に接触、折れた枝が飛来して激突される
広葉樹林内でヤチダモの立木を伐倒したところ、隣接しているイタヤカエデの立木に接触したことから、伐倒木の枝が折れて飛来し、伐倒木の伐根近くにいた被災者の頭部に激突した。
災害発生の状況
- 本事業は広葉樹林内にある立木の一部を伐採して販売するものであり、伐倒対象木は予め黄色いテープと銘板で印を付していた。
- 当日は9人が現場に行ったが、被災者と同僚はこれらの伐倒作業のため他の7人と分かれた。
- 被災者はチェーンソーを使用しての伐倒作業、同僚は被災者の助手として、伐倒する立木の周囲の雪堀り、伐倒木を引っ張るためのワイヤーロープ掛け作業等に従事した。
- 午前中に6本の伐倒を行い、午後に3本伐倒した後、ヤチダモ(胸高直径66 cm、樹高26 m)の伐倒にとりかかった。当該木はやや山側に傾いて立っていたが、枝ぶりは片枝や先折れなどのない普通の立木であり、また、地形は緩やかな傾斜であった。
- 被災者は当該木が沢の岸に立っていることから斜面の上方に向けて倒すことを決め、同僚に当該木の根元及び退避を行うため雪を掘るよう指示し、同僚は被災者の指示に従い雪を掘った。
- 被災者はチェーンソーで受け口をとった広葉樹林内でヤチダモの立木を伐倒したところ、隣接しているイタヤカエデの立木に接触したことから、伐倒木の枝が折れて飛来し、伐倒木の伐根近くにいた被災者の頭部に激突した。後、追い口をとり、さらにクサビを使用して倒したところ、倒れた方向に立っていたイタヤカエデ(胸高直径40 cm)に当たって伐倒木の枝(直径11 cm、長さ5 . 3 m)が折れて飛来し、伐倒木の伐根近くにいたAの頭部に激突したものである。
- 同僚は飛んできた枝が被災者に激突し、被災者がへルメットをしたまましゃがみ込んだところを目撃したことから、すぐに救急車を緊急手配し近くの診療所に運んだが、まもなく死亡が確認された。
災害発生の原因
- 伐倒方向を災害防止上好ましいと考えられている斜面の斜め、あるいは斜めやや下方向ではなく、斜面の上方としたこと。
- 伐倒方向にイタヤカエデの立木があり、伐倒の際かかり木、あるいは本件のように激突して枝折れ等が考えられるにも関わらず、イタヤカエデの除去等を行わないで伐倒したこと。
- 被災者は同僚に対して退避を指示し、同僚は退避したものの被災者自身は安全な退避場所に退避しなかったこと。
災害防止対策
- 傾斜のある場所における立木の伐倒方向は原則として斜面の斜め、あるいは斜めやや下方向とすること。
- 伐倒方向に立木等があって安全な作業上支障が生ずるおそれがある場合、当該支障木を処理した上で伐倒すること。
- 危険区域内で伐倒者以外の者の退避の確認はもとより、伐倒者本人も事前に選定した退避場所へ速やかに退避すること。