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災害事例研究 No.154 【林業】

伐倒方向が変わり切株に当たって元口が跳ね上がり激突された。

伐倒作業において、つるが機能せずに伐倒方向が変わり、伐倒木が切株に当たった衝撃で、元口が跳ね上がり激突された。

災害の発生状況

 被災者は同僚3名とともに、トドマツ人工林の伐倒作業を行っていたが、被災者が昼の休憩時になっても戻ってこないことから、同僚が見に行くと、シナノキの下敷きになっていた被災者を発見した。
 シナノキ(胸高直径40cm、樹高20m)は、伐倒方向にあった土手に倒れ、その途中、約5.2mの箇所にあったトドマツの切株に当たった衝撃により、元口部分が跳ね上がり、退避の途中(伐根から約2.7m地点)で、伐倒木の下敷きになったと推定される。
 シナノキの伐根を確認した結果、受け口は下切りと斜め切りの終わりが一致しておらず、下切りが切りすぎた状態となっており、追い口の位置も低く、つるが機能していなかった。
 また、クサビ1本を使用した痕跡はあるものの、つるが機能せず伐倒方向が予定した方向に倒れず、倒れる速度も速かったものと推測された。

災害発生の原因

  1. 受け口の下切りと斜め切りの終わり部分が一致しておらず、受け口が適切に切られていなかったこと。
  2. 追い口の位置も低すぎてつるが機能しておらず、伐倒方向を規制するクサビも適切に使用されていなかったため、伐倒木が予定した方向に倒れず、倒れる速度も速かったこと。
  3. 伐倒方向には切株があり、伐倒木がその切株に当たり、跳ね上がる可能性があったこと。
  4. 安全な退避場所が確保されていなかったこと。

災害の防止対策

  1. 受け口の下切りと斜め切りの交点を一致させ、受け口の下切りは切り込みすぎないよう確認しながら、伐倒すること。
  2. 追い口の位置は、受け口の高さの下から3分の2程度の高さとし、伐根直径の10分の1程度の切り残し(つる)を残すとともに、クサビを2個以上使用して伐倒すること。
  3. 伐倒方向は、伐倒木の傾斜及び重心位置、隣接木の状態、跳ね返りの可能性などを判断して、安全で確実に倒せる方向を選定すること。
  4. 退避は、安全な退避方向、場所を選定し、退避の障害となる灌木などは事前に処理しておくこと。

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〈 労働安全衛生規則 〉

(伐木作業における危険の防止)
第477条 事業者は、伐木の作業(伐木等機械による作業を除く。以下同じ。)を行うときは、立木を伐倒しようとする労働者に、それぞれの立木について、次の事項を行わせなければならない。
一 伐倒の際に退避する場所を、あらかじめ、選定すること。
二 かん木、枝条、つる、浮石等で、伐倒の際その他作業中に危険を生ずるおそれのあるものを取り除くこと。
三 伐倒しようとする立木の胸高直径が20センチメートル以上であるときは、伐根直径の4分の1以上の深さの受け口を作り、かつ、適当な深さの追い口を作ること。この場合において、技術的に困難である場合を除き、受け口と追い口の間には、適当な幅の切り残しを確保すること。
2 立木を伐倒しようとする労働者は、前項各号に掲げる事項を行わなければならない。

通 達

〈 チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン(令和2年1月31日付け基発0131第1号) 〉

イ 受け口切り(図1参照)
(イ) 受け口の下切りの深さが伐根直径の1/4以上となるように水平に切ること。なお、胸高直径が70センチメートル以上の立木の場合は、1/3以上となるようにすること。
(ウ) 受け口の斜め切りは、下切りに対して30度から45度までの角度で行うこと。このとき、下切り及び斜め切りの終わりの部分を一致させること。
ウ 追い口切り(図2参照)
(ア) 追い口切りは、受け口の高さの下から2/3程度の位置とし、水平に切り込むこと。
(イ) 追い口切りの切込みの深さは、つる幅が伐根直径の1/10程度となるようにし、切り込みすぎないこと。

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