災害事例研究 No.43 【林業】
林内作業車が突然作業路を下がり始め、作業者とともに転落
作業路で立ち往生した林内作業車が、急に下がり始め、止めようとした作業者が路肩から足を踏み外し転落、その上を後から転落してきた作業車に轢かれ受災した。
災害発生の状況
当日は、2名で利用間伐のための集材路開設を行っていた。被災者がチェーンソーで支障木の伐倒、同僚がグラップル(ザウルス)でつかんで倒していた。被災者は16 時30分ごろグラップルの燃料補給のため、林内作業車(小型運材車)に軽油の入ったドラム缶2本を積載し、20度の傾斜がある集材路を登坂してきた。その時、林内作業車の前方が浮き上がりエンジン停止状態となったため、近くにいたグラップルのバケットで押してもらい体勢を修復した。その後、被災者がエンジン始動のためスターターロープを数回引いて掛けていた時、林内作業車が急に下がり始め、それと並走するように被災者も坂を下った。約5m下がった後に、被災者が作業路法面へ約2m転落し、被災者の上を林内作業車が転落していった。
災害発生の原因
- 林内作業車に木材以外のものを載せたこと。
- 重心を考えずに坂道を登坂したこと。
- 逸走防止の措置をせず運転席を離れたこと。
- 林内作業車が急に下がり始めた時、手で止めようとしたこと。
- 作業路の縦断勾配が急勾配であったこと。
災害防止対策
- 林内作業車(フォワーダ、運材車)は林業では材を荷台に積載して集材する機械であることから、用途目的以外の使用をしないこと。
- 林内作業車の運搬量は定められた積載量を遵守することはもちろん、材を積み込むときは、重心を低く、かつ、偏荷重が生じないように積載し、積み荷を安定させること。荷縛りは荷締め専用器具を使用し、確実に締めること。
- 林内作業車を駐停止するなど、運転手が機械を離れる場合はエンジンを停止し、停止の状態を保持するための制動装置をかけること。また、車止め等の措置を講じること。
- 動き出した林内作業車に飛び乗り、止めようとすることは大変危険である。絶対にしてはならない危険な行為である。
- 作業路の勾配は現場の土質、使用する機械の能力に応じて決定すること。 なお、作業路の制限勾配の目安は、安全で能率的な作業、路面浸食の防止等のため、30%(約15度)程度とするのが適当である。また、30m以上の長い区間にわたる制限勾配に近い勾配の作業路は設けないこと。
おわりに
最近の災害事例にフォワーダ(林内作業車)の転落事故があったが、このような類似災害を繰り返さないためにも防災規程の遵守はもとより、上記の災害防止対策を参考とするとともに、以下の安全作業のチェックポイントも是非実行することが求められる。
- フォワーダの走行路
走行路は、安全に走行できる幅員(車幅の1.2倍以上)とし、できるだけ山側を走行すること。 - フォワーダの走行
フォワーダを発進させる時は、周囲の安全を確認すること。
走行速度は、走行路の勾配、路面の状況及び荷重に応じた安全速度とすること。
下降走行時はエンジンブレーキを併用し、急旋回をしないこと。 - その他
積み込み中や走行中のフォワーダには、積載物に接触する恐れがあることから作業者は近づかないこと。
運転者と他の作業者との間の連絡を確実にするため、信号、合図及び警報等の周知方法を定め関係者全員に周知するとともに確実に守ること。