災害事例研究 No.44 【林業】
立木に鹿害防止のための枝条取り付け作業中、急斜面を墜落
被災者は、鹿の被害からヒノキを守るために立木の幹に枝条を巻く作業に従事していたが、傾斜角約45度の斜面で足を滑らせてその場に転倒し、そのまま斜面を約39m墜落した。
災害発生の状況
災害発生場所は、3 年前に下刈り・保育間伐が終了したヒノキ人工林であり、当日は鹿による皮剥被害防止のための作業(枝条による幹の被覆作業)が行われていた。
当該地は急傾斜(傾斜角約45 度)である上に、夏の集中豪雨により作業場所付近の斜面は以前に比べて荒れており、滑りやすい状態となっていた。なお、被災者は保護具として、ヘルメット及びスパイク付足袋を着用していた。
─発生経過─
- 被災者を含めて6名は、朝よりヒノキ立木に枝条を巻く作業に従事しており、作業は二人一組で行われ、被災者は班長とペアを組んでいた。
- 昼休みを挟んだ後、その作業場所の最後の一本のヒノキに枝条を巻いていた(写真1)が、枝条が不足したため班長は、間伐作業で出た枝条集めのために被災者のそばを離れた。
- 班長が枝条集めのために場所を離れて被災者が一人になったときに、被災者が足を滑らせて転倒し、一旦立ち上がったかに見えたがその際にバランスを崩し、後ろ向きに回転しながら斜面を墜落した。
- 被災者は、傾斜角約45 度の斜面を約39m(高さ28m)墜落し、下の沢にある岩で頭部を強打した(写真2)。
- すぐに救急ヘリを手配し病院に搬送したが、重症頭部外傷で死亡が確認された。
災害発生の原因
急傾斜(約45 度)の斜面において、特段の安全措置を行わずに作業が実施されたため、足を滑らせ墜落した。
災害防止対策
- 作業指示
当日の朝、作業班は直接現地に入っており、担当者よりの安全指示は直接作業班に対しては行われなかった。(班長との事前打合せは実施済み) - 安全設備
墜落の恐れのある高所作業において、墜落防止の措置(作業床(足元整備)と墜落防止柵の設置又は安全帯の使用)に対する計画及び指示が行われていなかった。
* 傾斜が40 度以上の斜面は墜落の恐れのある箇所となり、高さ2m以上は高所作業に該当するため、作業床(足元整備)と墜落防止柵の設置又は安全帯の使用が必要となる(注) - 作業計画
担当者による現地の事前確認が十分に行われてなく、現地(荒れた急傾斜地)の状況にあった形での作業計画が立てられていなかった。
鹿害防止のため、現場にあった枝条を巻き付け作業中に転落