災害事例研究 No.46 【林業】
除雪作業中にブルドーザーが林道から転落
ブルドーザーで林道を除雪作業中、突然林道の路肩から傾斜約40度の谷側斜面を43.8m転落した。被災者は転落の際、ブルドーザーのキャビン内で操縦装置などに腹部を打ち、内臓破裂により死亡した。
災害発生の状況
- この事業は冬期間における伐木造材作業であり、樹齢70年生のスギ約1460㎡を、12月から3月までの4ヵ月に伐木造材から集材までを行うものである。
なお、集材作業は機械集材装置による架線集材作業が予定されていた。 - 事業量が多いため現場は第1、第2の2班に分けて作業を行うこととし、それぞれ9人で構成されていたが、事業地は豪雪地域であることからA、B班に所属しない除雪担当を2名配置しブルドーザーによる除雪作業を行っていた。
- 災害当日、被災者である除雪担当者Aは同僚Bを軽自動車に乗せて現場に向かい、国道から林道に入った箇所に駐車し、そこに置いているブルドーザーを運転して林道を除雪しながら進み15分かけて林道分岐点から400mの場所にある避難所に到着した。
作業者Bは軽自動車を運転してブルドーザーの後を追った。 - Aは待避所付近の雪をブルドーザーで2回程押して除雪した後、避難所の除雪を中途にして林道の先に進んだ。BはAに「待ってくれ」と手で合図をしたところ、Aは頭を下げうなずいたように見えたので、乗っていた軽自動車を待避所の除雪の済んだ個所に停車し、誘導するために歩いてブルドーザーの後を追った。この時点でブルドーザーは待避所から約80m進んでいた。
Bがブルドーザーの後方約40mまで近づいたとき、ブルドーザーが一旦後退し、再度前進したように見えた。その直後、ブルドーザーは方向を変え、谷側を向いて前のめりになるようにして路肩から転落した。Aはブルドーザーもろとも傾斜約40度の斜面を43.8m転落してキャビン内の操縦装置などに腹部を打ち、内臓破裂により死亡した。 - 災害が発生した林道路面はブルドーザーで踏み固められた雪が厚さ40cm程度あった。この個所の林道の幅員は積雪のため確認できなかったが、踏み固められた雪の幅は3.7mであった。転落箇所の前後には路肩の位置を示すポールが18.4mの間隔で設置されていた。なお、Bによるとちょうど転落した個所にもポールが設置していたとしているが、ブルドーザーの転落の際、雪に埋もれたと思われ、探したものの確認できなかった。
- 災害が発生した林道路面にはブルドーザーで踏み固められた雪が30cm 程度あり、その上に新雪が40cm程積もっていた。
ブルドーザーの転落箇所は積雪のため幅員の確認はできなかったが、ブルドーザーで踏み固められた雪の幅は3.7mであった。この事業の元請事業者によると、この林道は急峻な山の岩盤を削って建設されたものであり、幅員は4.3mから4.6mの設計となっているが、転落個所は最も狭く幅員4.05mということである。 - ブルドーザーの左右の履帯の外と外の間隔は2.55mであり、履帯の幅は51cmであって、標準タイプのシングルシューが取り付けられていた。
- ブルドーザーの運転席にはシートベルトが備えられていなかった。なお、ディーラーによるとオプションでシートベルトの備え付けは容易であったものである。
災害発生の原因
- 幅員が狭い積雪の林道において、谷側に向かって方向を変えたこと(方向を変えた理由は、谷側に排雪したことが推定される)。
- 誘導員が配置されているにも係わらず、誘導員が誘導する前に作業にとりかかったこと。
- ブルドーザーにシートベルトが備えられていないことから、シートベルトの着用ができない状態で作業を行ったこと。
災害防止対策
- 雪を谷側に排雪する場所、方向転換を行う場所、直進以外を禁止する場所などを明確に設定し、その順守徹底を図ること。
- 転落の危険がある個所には誘導員を配置し、誘導員の指示により作業を行わせること。
- ブルドーザーの運転席にシートベルトを設置し、運転中は着用させること。