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災害事例研究 No.49 【林業】

伐倒しようとした木が残存欠頂木に倒れかかり、その反動等で跳ね返った元口が当たってバランスを崩し、斜面を転落し肋骨を骨折した

 2年前の雪害によって折損等の被害を受けたスギ、ヒノキ混生林分の伐採処理作業中、伐倒したヒノキが近くに残存していたスギ欠頂木にかかって落ちた反動により、元口が被災者(伐木作業者)の身体に当たりバランスを崩した。痩せ尾根で足場の余裕を失った被災者は斜面を転落、途中で伐倒木に胸部を強打し、肋骨を負傷した。

災害発生の状況

  1. 林齢55年の人工林が春先の降雪によって折損等の被害を受けたため、被害後2年を経て、林道上方の被害木の除去と併せて間伐を実行した。
  2. 現場は、尾根通し傾斜約20度、左右林地の斜度がそれぞれ約35 度と25度の痩せ尾根上に伐根直径36cm、樹高約25mのヒノキが生立しており、右側林地上に約10mやや下方に離れて胸高直径32cm、高さ約12mで欠頂となったスギ、さらにその延長やや上方に6m離れて胸高直径38cm、高さ約18mのスギ欠頂木があった。
  3. 被災者は、上記ヒノキを両欠頂木の林地上側に伐倒しようと受け口、追い口を切ったが、目標とした方向からやや下方にずれて、離れた位置のスギに倒れかかった。かかったヒノキの枝がスギを押し付けつつ幹を滑り落ちかけた瞬間、バリッという音と共にスギ折損部が上方から約80cmほど裂け剥がれて、ヒノキ枝葉の着生量の多い方向に回るように斜面下側を落下した。
  4. ツルが切れたヒノキ伐倒木は、かかったスギの反発力を受けつつ落下し、次いで手前のスギを支点に上方幹、枝葉部が斜面を落ちると同時に元口側が跳ね上がり、伐倒木の上方に約1.5mの距離で退避していた被災者に当たり、その反動で左側林地を転落し、先に伐倒を終えていた木に激突したものである。

災害発生の原因及び防止対策

  1. 本事例の場合、伐倒方向をほぼ水平・横方向、両欠頂木の上側とし、受け口も狙った方向に正対しており、特に問題はないが、あえて言えば、ヒノキの枝葉着生が谷側に偏り気味であり重心位置の判断が加味されていなかった。
     対策として、重心位置を考慮するため、ツルの幅を山側に少し広くし、伐倒方向を規制すべきであった。
  2. 本災害事例の欠頂木2本は労働安全衛生規則第477条にいうところの「伐倒作業に危険を生ずるおそれのあるもの」に該当するため、その対策として、まず、伐倒木の周辺にある欠頂木の処理を先行することが必要である。
     なお、欠頂木を伐倒木の転落防止杭代わりにすることなく、別途、「転落防止杭」を設ける等の対策が必要である。当該場所の伐倒木の転落防止杭は高さが50cmもあれば十分だと思われる。
  3. 痩せ尾根で、それから続く両斜面も急となっている本事例では、事前の危険予知が求められる。危険の洗い出しを事前に行い、より離れた位置での退避場所、樹木の陰などの確認等をあらかじめ見定めることが必要である。
    casestudy049