災害事例研究 No.57 【林業】
フォワーダに同僚を乗せて下山中、急停車したフォワーダから被災者が転落
被災者は、同僚3名(集材機運転手、造材手、フォワーダ運転手)とともに、フォワーダに同乗して下山することとした。被災者は、フォワーダのエンジンルーム上に同僚と2人で腰掛け、もう1人はフォワーダ運転手と向かい合わせでキャビンの中に乗っていた。走行中、フォワーダ運転手の右肘が駐停車スイッチに触れたためフォワーダが急停車。その反動で被災者は前方路面へ投げ出され、腰を強打し、腰と腕を骨折した。
災害発生の状況
被災者(荷掛け手)が、その日の集運材作業を終えて下山しようとしたとき雨足が強くなった。そこで被災者は、同僚3名(集材機運転手、造材手、フォワーダ運転手)とともに、運材作業に使用したフォワーダに同乗して下山することとした。
被災者は、フォワーダのエンジンルーム(地上高140cm)上に同僚と2人で腰掛け、もう1人はフォワーダ運転手と向かい合わせでキャビンの中に乗っていた。
走行中、フォワーダ運転手が減速のためギアチェンジレバーを操作しようとしたとき、運転手の右肘が駐停車スイッチに触れてブレーキが作動したことにより、フォワーダが急停止した。その反動で被災者は前方路面へ投げ出され、右手から落下して1回転して腰を強打し、腰と腕を骨折した。
災害発生の原因
- 「搭乗の制限」を守らずに同僚を乗せたこと。
- 運転席(キャビン)にまで同僚を乗せたため、不用意に駐停車スイッチに触れてしまったこと。
災害防止対策
この労働災害は、運転席以外にほかの労働者を乗せてはならないという、守るべき基本がまったく守られていなかった。
危険を軽視する慣れや悪習慣が、現場で行われて労働災害につながっている。
本事例のような労働災害をなくすためには、次のような災害防止対策が考えられる。
- 車両系林業機械の運転は、特別教育の修了証などにより資格取得者であることを確認した上で従事させること。
- 走行時に運転席以外(荷台を含む)の個所に、ほかの労働者を乗せてはならないこと。
- 用途以外の使用はしないこと。
- チェック体制(服装や点検・整備の状況、合図・確認の方法、作業手順等)の確立を図り、確実な実行をすること。
今般、労働安全衛生規則の一部改正があり、車両系林業機械である「伐木等機械」「走行集材機械」「簡易架線集材装置または架線集材機械」の運転業務が新たに特別教育の対象となったことから、特別教育を修了した者は改めて労働災害発生を減少させるよう心がけること。
労働安全衛生規則
(搭乗の制限)
第151 条の101 事業者は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、乗車席又は荷台以外の箇所に労働者を乗せてはならない。ただし、墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じたときは、この限りでない。
(荷台への乗車制限)
第151 条の119 事業者は、荷台を有する走行集材機械を走行させるときは、当該走行集材機械の荷台に労働者を乗車させてはならない。
2 労働者は、前項の場合において同項の荷台に乗車してはならない。