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災害事例研究 No.61 【林業】

同僚が伐倒した間伐木に作業中の被災者が激突された

 被災者は、同僚と2人で間伐作業に従事していた。同僚が間伐木対象木の受け口を切り、追い口を切る前に本合図を行い、近くで作業していた被災者からの応答があったため追い口を切ったところ、伐倒木が倒れ始めた。その際、伐倒方向を確認したところ、伐倒方向で作業中の被災者を発見した。

災害発生の状況

  1. 当日、被災者は同僚と2人で間伐作業に従事していた。
     午後1時半頃、同僚は間伐対象木(スギ樹高約27m、胸高直径約30 cm)の伐倒に入った。受け口を切り、追い口切りに入る前に、近くですでに伐倒した伐倒木の梢端部の処理作業を行っていた被災者に伐倒する旨の声をかけたところ応答があったため、追い口を切り始めた。
  2. 追い口を切り終え、伐倒木が倒れ始めたとき、伐倒者である同僚が伐倒方向を確認したところ、被災者が退避していないことに気づき、大声で叫んだが間に合わず、伐倒木が被災者の頭部を直撃した。

災害発生の原因

  1. 同僚が合図を行ったが、被災者は退避せずにすでに伐倒していた伐倒木の梢端部処理作業を行っていたこと。
  2. 同僚は、受け口を切る前に被災者に声をかけ応答があったため、追い口切りの作業に入ったが、このとき被災者が危険区域外に退避したことを確認しなかったこと。

災害防止対策

[要約]

  1. 伐倒合図の目的は、危険区域内にいる他の作業者を危険区域外に退避させること。
  2. 他の作業者が確実に避難したことを確認してはじめて目的が達成できる。
  3. 「合図」は普段から呼子や大声で合図するクセをつけ、身につけることが肝要であること。
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以下、平成26年7月当協会発行「上級チェーンソー作業者の安全ガイド」より抜粋

伐倒合図は確実に

 伐倒合図が伐倒作業において非常に重要な事柄でありながら、伐倒合図の本質について理解が不足しているため、伐倒合図の不徹底による労働災害が後を絶たない。

 そして、その労働災害のうち、死亡や重篤な労働災害の大部分は伐倒作業者自身よりも同僚に与える労働災害が多くなっている。

 伐倒合図の目的は、危険区域内にいる他の作業者を危険区域外に退避させることであり、他の作業者が確実に避難したことを確認してはじめてその目的を達成できる。その方法としては、呼子又は大声で合図を送るとともに、その退避状況を応答の合図又は目視により確認することが重要である。

 一般的に「合図」の重要性は理解しているものの、一人作業でもある伐倒作業の場合、普段の作業で呼子や大声で合図するクセをつけていないため、身についていない場合が多いようである。

 日常的に伐倒作業時は必ず合図をするクセをつけることが肝要である。

本件の労働災害の対策は、抜粋記事の内容に尽きるが、ポイントを要約すると以下の3点である。

[要約]

  1. 伐倒合図の目的は、危険区域内にいる他の作業者を危険区域外に退避させること。
  2. 他の作業者が確実に避難したことを確認してはじめて目的が達成できる。
  3. 「合図」は普段から呼子や大声で合図するクセをつけ、身につけることが肝要であること。

[参考]

接近作業の禁止
立木を伐倒するときは、立木の樹高の1.5倍以上の距離の範囲内を危険区域とし、他の作業者を立ち入らせないこと。
また、他の作業の場合でも、作業者間の間隔は十分に保つこと。
作業前には、作業の手順、作業者の配置を定め、全員で確認する。また、作業中は、お互いの位置を確かめ合っておくことが大切となる。
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合 図

  1. 伐倒作業では、定められた合図を、呼子または大声で必ず行い、周囲の作業者等が危険区域外に退避したことを確認して作業を進めること。
  2. 合図は、次により行うこと。
    ① 受け口切りの作業を開始する直前に、「予備合図」を行うこと。
    ② 追い口切りの作業を開始する直前に、他の作業者等の退避を確認した上で、「本合図」を行うこと。
    ③ ただし、クサビを打って倒す場合、追いづるを利用して倒す場合などであって、追い口切りからクサビ打ち、追いづる切りまでの間にかなりの時間があるものについては、クサビ打ち、追いづる切りなどの直前に、「本合図」を行うこと。
    ④ 伐倒を終え、伐倒した材が安定して、周囲の安全を確認したときは、「終了合図」を行うこと。
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