災害事例研究 No.6 【林業】
かかり木の下で伐倒木の枝払い作業中、かかり木が倒れ下敷きになった
スギ立木(胸高直径26cm、樹高22.7m)の間伐作業において、伐倒した木がかかり木となったが、そのまま放置し、かかり木の近くで別の木を伐倒後、枝払いを行っていたところ、かかり木が倒れてきて被災者が下敷きになったものである。
災害発生の状況
- 災害の発生した事業場は、事業の大部分を森林組合から請け負い、伐採、造林、除伐、下刈り、枝打ち等の事業を行っていた。伐採の事業は年数回のみ行うだけで、当該災害も森林組合から請け負った事業である。
- 当該事業場の労働者は被災者を含め4人である。
- 災害発生現場での事業はスギ林の間伐作業であり、事前に森林組合で伐倒する立木にテープで印をつけているものを切るが、太い木は搬出し、細い木は切り捨てることとしていた。
- 災害発生当日は、当該現場での最初の作業日であった。作業は事業主を含め5人で行われ、被災者、作業員A、作業員Bは間伐作業、作業員Cは切り捨て間伐作業という作業分担の指示が、事業主からあった。事業主は間伐材を搬出するため、ドラッグショベルを使用して搬出路の除雪作業に従事した。伐倒作業は午前中に終了し、午後に間伐材の搬出作業を行う予定であった。
- 被災者と作業員Aは林道入り口から現場に移動し、Aは間伐区域の林道側から作業を始め、被災者はAよりも奥で伐倒作業を開始した。間伐作業は搬出材については2本程度伐倒した後に枝払いを行い、スケールで長さを測定してから玉切りを行った。
- 作業員Aは、間伐材を5、6本伐倒した後かかり木を発生させた。その処理のため、トビを使用してかかり木を回転させて外そうとした際、被災者が伐倒した木がかかり木となっていたのを発見した。また、被災者がそのかかり木の近く(約2m離れた場所)で立木の所有者と話しているのを見た。Bはかかり木が落下すれば危ないと思い、合図用の呼子を吹いたところ、Aが振り向いたので両手でバツ印を作って注意した。この時、被災者は手を上げて応じたので、注意したことが分かったと判断し、自分のかかり木の処理を再開した。
- 作業員Aは被災者の方を振り返ったところ、かかっている木が倒れるところが見えたため自分の作業を中断し、被災者のところに行ったところ、被災者が倒れているのを発見した。被災者はチェーンソーを腹で抱きかかえるような姿勢で倒れており、チェーンソーのエンジンは止まっていた。
- 被災者が倒れていたところにあった伐倒木(胸高直径22cm)の伐根の近くにはハンマーとくさびが置かれていた。
- 現場の状況から、被災者はかかり木を放置したまま、隣接する立木を伐倒し、枝払いを行っていたところ、そのかかり木が倒れて被災者を直撃したものと推定される。
- かかり木がかかっていたと思われる枝は9.54mの高さにあり、長さは120cmである。
被災者は、伐木等の業務特別教育(労働安全衛生規則第36条8号、8号の2)修了済であった。
災害発生の原因
この災害は、かかり木の処理作業にかかる基本的事項を遵守しなかったため発生したものである。
- かかり木が発生したにもかかわらず、かかり木の処理を行わず、かつ、標識や縄張り等の措置を講じないでそのまま放置したこと。
- かかり木の近くで枝払いなどの造材作業を行っていたこと。
- 間伐作業であり、かかり木が生ずることが考えられにもかかわらず、かかり木の処理方法等を明確に定めていなかったこと。
- 作業員にかかり木に対する危険の認識が低いこと。
災害防止対策
- かかり木が生じた場合はそのまま放置しないで、直ちに適切な方法により処理すること。
- かかり木を一時的に放置しなければならない場合は、縄などで区画して立ち入り禁止とし、その旨標識を掲げること。
- 作業員に対して、かかり木の適正な処理方法について再教育を行うこと。