災害事例研究 No.156 【林業】
かかり木の状況を確認中、かかっている木が外れ被災者に激突
マツ立木をチェーンソーで伐倒する作業を行っていたところ、かかり木となり、その状況を確認中にかかっている木が外れ被災者の頭部に激突した。
災害の発生状況
被災者は、山林において、同僚と2人でそれぞれの持ち場で、チェーンソーを使用してマツ立木の伐倒作業に従事していた。胸高直径30cm、樹高約20mのマツを伐倒したところ、隣接する立木にかかり木となった。このため、被災者はかかっている木に近づいてその状況を確認していたところ、突然かかっている木が外れ、被災者の頭部に激突した。
災害発生の原因
- かかり木の状況確認中にかかり木直下の危険区域に立ち入ったこと。
- かかり木の状況について常に注意していなかったこと。
- かかり木に対する危険の認識が低かったこと。
災害の防止対策
- かかり木の直下は、いつ、かかっている木が外れ落下するか分からない状態にあるので、かかり木の状況確認等段取り中であっても、かかっている木が外れ危険が生ずるおそれのある箇所には立ち入ってはならないこと。
- かかり木の処理を終えるまで、かかり木の状況に常に注意を払い、危険が生ずるおそれのある場合には、予め選定した退避場所に速やかに退避すること。
- かかり木の処理について、事前調査及び作業計画により、予め安全な方法を定め、その方法によりかかり木を取り除くこと。
かかり木が外れて激突された災害について
かかり木の直下及びその周辺に入って状況確認やロープ掛け作業中にかかり木が落下して激突される災害は、13次防期間中の平成30年度からの4年間で1件であるのに対し、本年は1月~6月までの半年間の14件の死亡災害の中で既に2件発生しています。
このため、かかり木はかかっている枝が折れたり、風が吹いたりすると、突然かかっている木が外れて落下して激突し大変危険であることを改めて認識し、かかり木の処理に当たっては、次により実施することが必要です。
かかり木は、隣接木との枝がらみなどによってかかり木になっていて、いつ落下してくるか分からない危険(リスク)があることから、かかり木の直下及びその周辺での処理作業や段取りを行わないようにすることに尽きます。かかり木の状態を注視しつつ、危険を及ぼさない場所から、けん引具、木回し、フェリングレバー、ロープ等を使用してかかり木を外す、また、車両系木材伐出機械、機械集材装置、簡易架線集材装置を使用できる場合には、これらを使用して、かかり木を外すようにしましょう。
〈 チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン:別添2 かかり木の処理の作業における安全の確保に関する事項〉(令和2年1月31日付 基発0131第1号)
(2) 安全な作業の徹底
ア 確実な退避の実施等
(ア) 退避場所の選定等
かかり木の発生後速やかに、当該かかり木の場所から安全に退避できる退避場所を選定すること。
(イ) かかり木の状況の監視等
かかり木が発生した後、当該かかり木を一時的に放置する場合を除き、当該かかり木の処理の作業を終えるまでの間、かかり木の状況について常に注意を払うこと。
(ウ) 確実な退避の実施
かかり木の処理の作業を開始した後、当該かかり木がはずれ始めたときには、上記アで選定した退避場所に労働者を速やかに退避させるようにすること。
また、かかり木の処理の作業を開始する前において、当該かかり木により労働者に危険が生ずるおそれがある場合についても、同様に退避させるようにすること。
〈林業・木材製造業労働災害防止規程〉
(かかり木の処理)
第54条 会員は、かかり木が生じた場合には、作業者に当該かかり木を速やかに処理させるとともに、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
(1) 当該かかり木の処理の作業について安全な作業をさせるため次のアからオまでの事項を行わせること。
ア 当該かかり木の径級、状況、作業場所及び周囲の地形等の状況を確認すること。
イ 当該かかり木が生じた後速やかに、当該かかり木により危険を生ずるおそれのある場所から安全に退避できる退避場所を選定すること。
ウ 当該かかり木の処理の作業の開始前又は開始後において、当該かかり木がはずれ始め、作業者に危険が生ずるおそれがある場合、イで選定した退避場所に作業者を退避させること。
エ かかり木が生じた後、やむを得ず当該かかり木を一時的に放置する場合を除き、当該かかり木の処理の作業を終えるまでの間、当該かかり木の状況について常に注意を払うこと。
オ やむを得ずかかり木を一時的に放置する場合、当該かかり木による危険が生ずるおそれがある場所に作業者等が近づかないよう、標識の掲示、テープを回すこと等の立入禁止の措置を講じさせること。
(2)、(3) 略
2 略