災害事例研究 No.63 【林業】
架線集材作業中、崖上から転がり落ちてきた切り株が、退避中の作業者に激突した
作業道上でチェーンソーによる造材作業に従事していた被災者は、架線集材で集材のため退避していたところ、崖上から根株が転げ落ちて、退避中の被災者に激突したものである。
災害発生の状況
- 当日、林家から受注した伐倒後の原木集材作業及び造材作業に5人で従事していた。
午前8時に現場責任者が作業分担を行い、機械集材装置の集材機運転、先山の荷かけ作業に各々1人が就き、被災者と同僚2人は作業道上の土場で造材作業に就いた。
なお、作業開始時に、機械集材装置、チェーンソー、グラップル等を始業点検したが異常は見られなかった。 - 先山斜面の荷かけ作業に就いた荷かけ手は、斜面を転がって下方へ落ちるような物がないか点検したが、特に見当たらなかった。
午前9時30分頃、荷かけ手は、根元直径約30cm、長さ約15mある原木3本に玉掛け用スリングロープにより荷かけを行い、笛により集材機運転手に合図を行った後、安全な場所へ退避した。 - 作業道上で造材作業中の被災者と同僚は、集材機により原木3本を巻き上げはじめた様子を見上げるとともに、被災者は、チェーンソーを持って反対側の斜面崖下へ退避した。
- 原木3本を巻き上げた後、約15m作業道上にある土場方向へ集材したとき、被災者が退避していた場所の崖上から直径約30cm、長さ35cmの切株が転げ落ちてきて被災者の保護帽側面に激突し、被災者は昏倒した。
(注)被災者が退避していた場所の崖の高さは約5m、斜面勾配は約45度程度。 - 被災者が昏倒するところを見た集材機の運転手の叫び声に、近くにいた現場責任者と同僚が気づき、被災者を病院へ搬送したが意識が戻らず死亡が確認された。
災害発生の原因
- 作業道上の土場にいる造材作業者の退避場所をあらかじめ決めていなかったこと。
このため、被災者は結果として不安全な崖下へ退避してしまった。 - なお、なぜ切株が転げ落ちたかは現認者がいないため、特定できなかった。
災害防止対策
- 退避場所は必ず事前に安全な場所を決めておくこと。
林業架線集材作業においては、事前に作業現場の調査及び調査結果の記録を行うとともに、当該結果に基づき作業計画を立て、当該計画の内容を作業者に周知することとなっている。 - 先山の荷かけ手は、「集材機運転手に合図を行った後退避した」とあるが、これは大変危険である。荷かけ者が荷かけを行ったら、まず安全な場所へ退避した後、集材機運転手へ合図を行うこと。
- 何らかの原因で落下してきた切株については、作業のため物体が落下することにより労働者に危険を及ぼすおそれがあるため、「物体の落下による危険の防止」(労働安全衛生規則第537条)に基づき防網の設備の設置若しくは立入禁止区域の表示を行う等の措置を講じること。