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災害事例研究 No.68 【林業】

タイヤショベルを使用した伐倒作業中、合図者が伐倒木とツルがらみで折れた枯木に激突された

 タイヤショベルを使用してマツを斜面上方へ伐倒する作業中、ツルがらみとなっていた枯木が途中から折れ、タイヤショベルの運転手と伐倒者へ作業合図を行っていた被災者が折れた枯木に激突された。

災害発生の状況

災害発生場所は、60年生の天然林で、傾斜25~30度の斜面において、松くい虫被害木の伐倒作業に4名で従事していた。被災者は、伐倒木から6m離れた場所で、タイヤショベルの運転手と伐倒者へ作業合図を行っていた。伐倒木(胸高直径58 cm、樹高15m)をガイドブロックを使ってタイヤショベルで斜面の上方に引き寄せながら伐倒したところ、伐倒木が斜め上方約12.5m離れたマツ枯木(胸高直径40 cm、樹高10 m)とツルがらみになっていたため、マツ枯木が地上4mの高さで折れた。被災者は、折れて落下した枯木の梢端部に背後から頭部を激突された。

災害発生の原因

本事例は、ツルがらみとなっていることを把握していたので、タイヤショベルを使用して伐倒木を上方に引き寄せながら伐倒したものと推測される。また、作業合図者は、伐倒木の樹高の1.5倍以上離れた場所に退避して合図を行っていなかったことが、災害の原因と推測される。

  1. 被災者が伐倒木の樹高の1 . 5倍の立入禁止区域に入っていたこと
  2. ツルがらみの木は、事前にツルを除去していなかったこと

災害防止対策

作業合図者は、伐倒木の樹高の1 . 5倍以上離れた位置で、かつタイヤショベルの運転者及び伐倒者から見える位置で合図を行うこと。また、伐採の安全な方法としては、ツルの根元を切り離し、折れた枯木もタイヤショベルで引き寄せられるようにしておいて、受け口と追い口を伐倒木と同じ方向に切り、クサビを打ち込み倒れる状態にしておく。次に、伐倒木も受け口と追い口を切り、タイヤショベルで引き寄せながらクサビを打って折れた木と一斉に倒す方法を用いるとツルに引っ張られて枯木が途中で折れて飛来することもなく伐倒することができる。ただし、伐倒する前に、伐倒木と隣接木との状態(ツルがらみ、立木の傾き、重心の位置等)についてよく観察し、熟練者の指導の下作業を行う必要がある。近年、ツルがらみの立木の伐採において、災害が多発しており、このツルがらみによる災害を減らすには、伐採する2~3年前にツルの根元を切り離しておくことにより、伐採する頃にはツルが枯れ、ツルの引っ張り力を弱められるので、先を見据えた対策も必要である。
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  1. 枝がらみの木では、思いがけず、枯れ枝や折れた枝が飛来・落下することがある。

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  2. 伐倒する立木にからんでいるつる類は、できるだけ伐倒前に取り除いておくこと。
    伐倒木にまとわりついているつる類は、外しておく。

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