災害事例研究 No.70 【林業】
かかり木の下で、他のかかり木を処理中に、上方のかかり木が落下して下敷きとなった。
被災者が伐倒したヒノキがかかり木となったので、浴びせ倒しで倒そうとしたが、連続して3本かかり木となり、2本目の処理中に、3本目のかかり木が被災者の上に落ちて、下敷きとなったものである。
災害発生の状況
- 現場は人工林で、手入れがされていない状態であった。当日の作業は、作業道を開設するための支障木の伐採作業に従事。朝の打合せで作業担当を決めて、4人で作業に取りかかった。被災者と同僚Aは伐倒作業に、同僚Bは車両系建設機械を運転して作業道の開設に、同僚Cはプロセッサによる造材作業に従事していた。
- 被災者と同僚Aは、午前中は2人1組で作業をしていたが、午後からは同僚Aがフォワーダを移動するために伐採現場を離れた。被災者は1人で午後の作業にかかった。
14時15分頃、同僚Bは被災者のチェーンソーの音が聞こえなくなったので、不審に思い、被災者に無線連絡を入れたが応答が無かった。このため、車両を降りて前方の伐採現場に入ったところ、ヒノキの伐倒木の下敷きになっている被災者を発見した。被災者は伐倒木の伐根近くの斜面にうつ伏せで倒れており、その背中上部に伐倒木が落下した状態であった。防災ヘリと救急車の連携で病院に搬送したが胸部圧迫で死亡した。 - 災害発生当時、被災者は1人で作業をしていたので、災害の現認者はいなかったが、現場の伐倒木の重なり具合などの状況から、次のとおり推定された。
被災者は、ヒノキA(胸高直径25cm、樹高18m)をまず伐倒したが、かかり木となった。これを倒そうとして、ヒノキB(胸高直径27cm、樹高19m)を浴びせ倒したが、これもかかり木となった。次にこれらを一度に倒すべくヒノキC(胸高直径26cm、樹高18m)を浴びせ倒したが、これもかかり木となった。このため2本目のヒノキBのかかり木のつる切りをしていたところ、かかり木となっていた3本目のヒノキCが被災者の背中上部に落下したものと推測された。 - ヒノキAからヒノキCの3本は、ほぼ直線状に並んでおり、被災者がいた場所は斜度25度であった。ヒノキAとヒノキB、ヒノキCの間隔はそれぞれ4mであった。
被災者は、ヒノキBからヒノキC方向に0.5m離れた場所で被災した。
災害発生の原因
- かかり木の処理で禁止事項である浴びせ倒しを3本連続で行ったこと。
- かかり木の下で、作業を行っていたこと。
- 伐倒技術が我流であり、受け口切り、追い口切り、適切なつる残しなど、基本事項を実施していなかったこと。
- 胸高直径が20cm以上の中径木が多かったのに、かかり木の処理をするためのけん引具、ワイヤロープ、ガイドブロックなどの処理用具を持ち込んでいなかったこと。
- 伐採現場の事前調査は行っていたが、安全に作業を行うための計画を立てていなかったこと。
災害防止対策
- かかり木の処理は複数で対応すること。
- かかり木の処理で禁止事項である浴びせ倒しをしないこと。
- かかり木の下に立入って、作業をしないこと。
- 伐倒するときは、伐倒の基本事項を確実に導守すること。
- かかり木処理に必要な用具を現場に持込むこと。
- 事前調査の結果により、安全で適切な作業計画を立てること。
- 同種災害の再発を防止するため、「かかり木の処理作業における労働災害防止のためのガイドライン」(H14.3.28付け基安安発第0328001号)を遵守すること。