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災害事例研究 No.71 【林業】

下草刈りの作業中に蜂に刺され死亡

 下草刈り中にムモンホソアシナガバチ(通称:ササバチ)に刺され、アナフィラキシーショックにより死亡したものである。

災害発生の状況

 被災者は、同僚2名とともに午前9時から刈払機を用い、下草刈りを開始した。
 午前10時ごろ、被災者は同僚作業者1名に、「蜂に顔を刺された」と話をしたが、しばらく作業を継続した。
 午前10時15分ごろ、被災者が、「気分が悪くなったので木陰で休む」と同僚作業者に伝え、木陰で横になったのを同僚作業者が確認した。
 10時半ごろ、休憩のため同僚作業者が被災者の様子を見に行ったところ、被災者は口から泡を吹き、自発呼吸をしていない状況であった。直ちに救急車を手配し病院に搬送したが、収容先の病院で死亡が確認された。

災害発生の原因

  1. 被災者は、ムモンホソアシナガバチに刺されたと思われるが、この蜂は、低木の葉の裏等に営巣し、営巣初期においては発見しにくいこと
  2. ムモンホソアシナガバチは、体長20㎜程度であり、飛翔状況が確認しにくいこと
  3. 被災者は、過去に自宅周辺で数回にわたりアシナガバチに刺され、じんましんが出た経験があったこと
  4. 被災者や同僚作業者に、アナフィラキシーショックに関する知識がなく、対処が遅れたこと。

災害防止対策

 蜂刺されによる死亡は、毎年20例程度が報告され、林業労働者も1~2名の死亡例が報告されています。
 人を刺す代表的な種類は、ミツバチ類、アシナガバチ類、スズメバチ類ですが、近年、蜂毒の研究が進み、交叉性が認められるとの報告があり、異種の蜂でもアナフィラキシーショックを起こす可能性が指摘されています。
 蜂に刺されないに越したことはないのですが、林業労働者にとって、蜂の生息区域に入らないという選択肢はありません。したがって、蜂には刺されるものとして対処法を準備する必要があります。

  1. 対象労働者に対して、抗体検査を必ず実施すること
  2. 検査の結果、抗体を有している労働者には、エピペン(自己注射器)を携行させること
  3. 対象労働者に対して、アナフィラキシーショックの教育を徹底すること
  4. エピペンの有効期間を必ず確認すること
  5. エピペンを使用するタイミング、使用方法を対象労働者に十分教育すること
  6. エピペンは、治療薬ではないことを周知すること
  7. エピペン使用後は、直ちに病院に搬送すること
  8. 全身症状が出た場合に備え、搬送先の病院を確認しておくこと(山間部では、救急車が到着するまでに死亡した例がある)

蜂刺されによる死亡者数等(平成16年~平成26年)

  平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年
民有林死亡者 2 0 2 1 0 1 1 0 0 2 0
国有林 蜂刺され数 358 376 280 212 239 156 135 145 151 142 75
エピペン使用 0 3 0 1 0 1 2 1 0 0 0
蜂刺され死亡者数 18 26 20 19 15 13 20 16 22 24  

資料出所:民有林死亡者等は、林野庁調べ
蜂刺され死亡者数は、厚生労働省「人口動態統計」

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 蜂が活発に活動する期間は、地域によって多少違いはあるものの、7月から10月と言われています。この期間は、作業服も薄手の物になります。頭部の保護には防蜂網が有効ですが、作業服の上からも刺されますので、十分注意をお願いします。