災害事例研究 No.73 【林業】
伐倒作業中、放置していたかかり木がはずれ直撃された
混んだ林分で、つる(蔓)がらみの木を伐倒しようとしたが、予定した伐倒方向と180度反対側に倒れ、かかり木となり(推定)、かかられた木の3m程先の別の立木を伐倒しているときに、かかり木がはずれて直撃され、外傷性窒息死で死亡した
災害発生の状況
被災現場は東側に向いた斜度30度ほどの急傾斜地での47年生のトドマツの定性間伐作業である。
林分は相当に混んでおり、いたるところつる(蔓)がらみになっていた。(写真1、図)
当日は朝から5名で作業に当たっていたが、伐木に従事していたのは被災者のみであった。
午後3時30分の集合時刻に被災者が戻ってこないことから同僚が捜しに行ったところ、作業道から南側に入ったところで、樹高20m、胸高直径28cmのトドマツ(加害木)の先端部(直径12cmほど)樹幹の下敷きになっている被災者が発見された。(写真2)
被災者の傍に、受け口のみ切られた(写真3)トドマツ(立木A)があり、同トドマツの追い口を入れようとしたところで加害木の直撃を受けたものである。
加害木の伐根は被災場所から15m北側にあり、3段になった特殊な形状で、元口と完全に切り離されていた。(写真4、図)
被災場所から3m北側にトドマツ立木(立木B)があり、西側に加害木が擦ったと思われる跡が上部にみられた。
作業状況を現認した者がいないことから推測になるが、加害木が立木Bにかかり木となり、これを放置して、その3m先のトドマツ(立木A)を伐倒しようとしていた時、かかり木が落下したか、あるいは加害木を伐倒しようとして倒れないために伐根を切り離したが倒れず、不安定な状態に放置したまま、ある程度離れた場所で立木Aを伐倒しようとして被災したことも考えられる。
いずれにしても伐根から切り離された不安定な加害木の樹高の範囲内での作業であった。
災害発生の原因
- 伐根のつるを完全に切り離した状態の危険木の倒れる範囲内で作業を行ったこと。
- 混んだ林分でつる(蔓)がらみの木を無理に伐倒しようとしたこと。
- 作業道近くに伐倒するためか北側を伐倒方向にしたため、伐倒しづらかったこと。
災害の防止対策
- 混んだ林分やつる(蔓)がらみの現場は確率でかかり木となることを予想されるのでできるだけ定性間伐ではなく、列状間伐の方法が検討されるべきである。
- かかり木処理について林業機械の導入等、事前に安全な処理方法を定めておき、伐倒手に周知させる必要があること。
- 北側を伐倒方向にするときは、重心が南側になることが多く、あらかじめ伐倒規制の方法を検討しておくこと。
- 伐根のつるを切り離した場合は不意の転移が起きることから絶対に放置しないこと。
- 条件の悪い現場についてはそれに応じたリスクアセスメントの実施が必要であること。
等が考えられる。