災害事例研究 No.83 【林業】
「投げ倒し」(浴びせ倒し)したかかり木の状況を確認時、かかっている木が落下し激突
かかっている木へ「投げ倒し」(浴びせ倒し)したら二重のかかり木となり、その状況確認時、かかっている木が落下し作業者に激突した。
災害発生の状況
スギ立木(胸高直径46 cm、樹高24m)を伐倒したところ、かかり木になったので、近くのスギ立木を伐倒し、その落下する重みでかかっている木を外そうとしたところ、その伐倒木もかかり木になってしまった。そこで二重にかかってしまった状況を見るため、かかっている木の下に入った途端、突然かかっている木が落下し、作業者に激突した。
災害の発生原因
- かかり木の処理に当たって、「かかり木の処理の作業における労働災害防止のためのガイドライン(平成14 年3月28 日付け基安安発第0328001号)」において禁止されている「投げ倒し」(浴びせ倒し)を行ったこと。
- かかり木の下に入り状況確認を行ったこと。
- 当該事業は指示を要する作業にも関わらず、70歳代の作業者が我流により独断で作業をしたこと。
- 胸高直径が20 cm以上の木が大半を占める林であるのに、かかり木の処理をするためのけん引の処理用具を携行していなかったこと。
災害の防止対策
- かかり木の処理方法で「投げ倒し」(浴びせ倒し)作業は次のとおり危険な作業であり、禁止作業となっており、絶対やらないこと。
ア かかっている木の幹に、他の隣接木を「投げ倒し」(浴びせ倒し)するため、投げ倒しした木が跳ねあがったり、旋回したり、幹が折れたりする。
イ 「投げ倒し」(浴びせ倒し)した木が再びかかり木になる可能性が高い。
ウ 「投げ倒し」(浴びせ倒し)によりかかり木が解消しても、かかられている木やかかっている木の枝が飛来、落下する。 - かかっている木は、いつ落下するかわからないので、かかり木の状態を見る場合であっても、かかり木の下には入らないで、離れた箇所から観察すること。
(注)「投げ倒し」(浴びせ倒し)作業を実施したため、かかられている木の枝がかなり傷められており、大変危険な状態であることを認識すること。 - かかり木の処理は、必ず複数の者により適正な方法を検討のうえ、けん引具等の器具あるいは重機等を用いて早急に安全に処理すること。
(災防規程)第29条(かかり木の処理)
会員は、かかり木が生じた場合には、作業者に当該かかり木を速やかに処理 させるとともに、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
- かかり木の処理作業は、事業者が指名した熟練者の指導のもとに行うこと。
(災防規程)第28条(指示を要する伐木)
会員は、次の各号に掲げる業務に就かせる場合には、安衛則第36 条第8号に係る特別教育修了者のうちから技能を選考のうえ、会員が指名した者に、伐倒による危害を防止するための必要な事項を指示させなければならない。
(5) かかり木となるおそれのある木の伐木の業務
(6) かかり木の処理の業務 - 類似災害を防止するため、「かかり木の処理の作業における労働災害防止のためのガイドライン(平成14 年3月28 日付け基安安発第0328001号)」の「第4 事業者が講ずべき措置」の〈2 安全な作業方法の徹底 ⑸かかり木の処理の作業における禁止事項の遵守〉に基づき対応のこと。
- 事業者又は現場責任者(班長等)は作業現場を適宜巡視し、作業別の標準作業から外れた問題のある作業方法について、安全な作業手順の教育・指導・監督・指示などを行い、問題点の改善を行うこと。