災害事例研究 No.85 【林業】
枯損木が折れて飛び、牽引具操作者の顔面を直撃
伐倒したスギが枯損木に当たり、更にその枯損木が既に伐倒済みの木の上に倒れ、枯損木が折れてその梢端部が飛んで、伐倒方向を規制するために牽引具を操作していた者の顔面に激突した。
災害発生の状況
- 災害発生現場は、写真に示すとおり、元々の手入不足に加え、台風による風倒木、かかり木、枯損木及びかん木が放置され、足の踏み場もないほどの状況であったことと、斜面のすぐ下側を道路が走っていた。
発注者から指示された請負内容は、指定された立木の切捨て作業である。 - 伐根直径45 cmの二股スギにワイヤロープを掛けて牽引具で引っ張り、道路側に倒れないように、伐倒方向を規制しながら伐倒し始めたところ、予定方向とは逆方向に傾いた。このため道路に平行に倒すべく、別の牽引具を使用して伐倒した時に、伐倒方向にあった枯損木に接触したため、枯損木が倒れて既に伐倒していたナラの木に当たり、枯損木の梢端部が折れて飛び、山側で牽引具を操作していた被災者(保護帽は着用していた)の顔面に激突して死亡したものである。
災害の発生原因
- 伐倒の際に危険の生じるおそれのある枯損木を、あらかじめ取り除くなどの処理をしていなかったこと。
- 牽引具操作者が牽引具設置後、伐倒木の樹高の2倍以上退避していなかったこと。
- 請負内容が、伐倒する立木の本数指定と短期間での処理指示であり、それ以外の付帯作業の把握がされていなかったこと。
災害の防止対策
- 伐木の作業を行う場合は、かん木、枝条、枯損木、浮石などで伐倒の際に危険を生ずるおそれのあるものは、あらかじめ取り除いておくこと。
参照:【 林業・木材製造業労働災害防止規程第31条】 - 牽引具操作者は牽引具設置後、伐倒木の樹高の2倍以上退避するとともに、伐倒者は他の労働者が立入禁止区域から退避したことを確認した後に伐採すること。
参照:【 林業・木材製造業労働災害防止規程第25条、第37条】 - 発注者は、伐採の仕事を発注するに際して、山の状況を調査した上で、請負事業者が安全に作業できるように、上記1の処理経費の積算及び適切な作業期間を設定して発注すること。
参照:【労働安全衛生法第3条第3項】