災害事例研究 No.87 【林業】
伐倒木に滑落防止のためワイヤロープを掛けて伐倒した時に、伐倒木が反動して激突
傾斜約30度の斜面の間伐作業で、伐倒木が沢側に滑落するのを防ぐため、伐倒木にワイヤロープを掛け、これを緊張させて伐倒を始めた。
伐倒木が倒れかけた時、作業者は伐倒木から2メートルほど山側へ退避していたが、さらにその場から離れようと山側に退避した際、伐倒木の根元が山側に跳ね上がり被災者に激突した。
災害発生の状況
当日は、気温が30℃を超える、暑さの中で、被災者は同僚4名と、間伐作業に従事していた。
午後2時過ぎ、被災者は作業道の路肩から約10m下方のスギ立木(胸高直径34 cm、樹高24 m)をチェーンソーを使って伐倒を始めようとした。
最初に、伐倒する立木が沢側に滑落するのを防ぐため、作業道上のスイングヤーダを使って、伐倒木にワイヤロープを掛け滑落を防止しようとした。
ワイヤロープを伐倒木の根元から約2mの高さのところに輪状にかけて、スイングヤーダからのロープが緊張するように張った。
被災者は受け口、追い口を伐り、立木がゆっくりと倒れ始めた。
被災者は山手側約2mに退避したところ、倒れる立木の予想外の動きがあったので、危険を感じて退避場所から逃げようとして体を山側に向けた時に、伐倒木の根元が山側に跳ね上がり、被災者の方向に動いて激突した。
災害の発生原因
- ワイヤロープを掛けて緊張させていたため、伐倒後の伐倒木の動きが予測できなかったこと。
- 被災者の退避が2m程度で十分な距離が確保できていなかったこと。
災害の防止対策
- スイングヤーダを使用した、今回の滑落防止対策では、伐倒木に緊張力が働くので、予想しがたい動きが生じた。
今回のような滑落防止措置をする場合には、伐倒時には緊張させずに緩んだ状態にしておく方法など、力のかかり方に配慮した対策を講じること。 - 被災者は、伐倒作業の経験の浅い者であったため、今回のような伐倒作業をする場合には、経験のある作業責任者から指示を受けて、十分な安全を確保して行うこと。
- スイングヤーダの使用などによる連携作業は、伐倒時のワイヤロープの緊張状態を確認するなど、作業者間の連携を図ること。
- 被災者の退避場所は伐倒木の上方向であったが、安全が確保される距離の3mが確保できていなかったことや、足元が傾斜地で枝が散乱していたことから、伐倒前に退避路や安全な退避場所を確保すること。
- 伐倒方向が列状間伐であるため、沢(下)方向を選定しているが、退避場所の選定や、不安全な滑落防止対策をしなくて済むような伐倒方法を検討すること。
伐倒木の滑落防止対策について
間伐作業では、伐倒木の滑落防止として、今回のような作業方法がしばしばとられており、本災害が発生した県域では、一昨年にも同じような死亡災害が発生している。
今回は、骨折してしばらく休業をしていたが、1か月程度で復帰することができたものの、伐倒木の当たりどころが悪ければ死亡する恐れがあった。
スイングヤーダを使用した集材方法では多くの場合に沢側への伐倒が行われている。
今後もこのような作業が続くものと思われるので、ワイヤロープを使用した安全な滑落防止方法の検討が必要と思われる。