災害事例研究 No.90 【林業】
伐倒方向の規制を行い伐倒中、伐倒木が隣接木に当たり、先端部が折れて被災者に直撃
伐倒方向を規制するため、ワイヤロープを使用してチルホールで山側にけん引したところ、隣接木に当たり、伐倒木の先端部が折れて飛来し、被災者に激突した。
災害発生の状況
重心が谷側に偏っているスギ立木(胸高直径58 cm、樹高28m)を山側に伐倒するため受け口と追い口を切り、立木にワイヤロープを掛け、伐倒方向である山側からチルホールで引いたところ、伐倒木が回転しながら、隣接のスギ立木に当たり、幹の先端部が折れて飛来し、作業者の頭部に激突した。
災害の発生原因
- 滑車を用いず、伐倒方向となる山側からチルホールでけん引したこと。
- くさびを使用して重心を山側に移動させなかったこと。
災害の防止対策
- 重心が谷側に偏った立木をチルホールでけん引して山側に倒す作業(以下「起こし木の伐倒作業」という。)は、伐倒者とけん引する者と複数の者で作業すること。
- 起こし木の伐倒作業の場合、伐倒方向が変わったり、立木が回転したり、根元が跳ねたりすることから、事前に他の作業者と作業手順、作業方法、合図等の打ち合わせを十分に行い、合図で確認しながら作業をすること。
- 山側に伐倒するとき伐倒者は受け口を切り、つる幅を多めに残して追い口を切った後、2本以上のくさびを打ち込んで重心を山側に移動させること。
けん引者は伐倒方向からけん引することのないよう、ガイドブロックを用いて安全な場所からチルホールで徐々にけん引して伐倒すること。 - 根元が跳ねないように根元に控え索をとること。
- 控索を使用して行う伐木の業務は、指示を受けて作業を行うこと。
<参考>
災防規程 第28条(指示を要する伐木)
会員は、次の各号に掲げる業務に就かせる場合には、安衛則第36 条第8号に係る特別教育修了者のうちから技能を選考のうえ、会員が指名した者に、伐倒による危害を防止するための必要な事項を指示させなければならない。
- 控索を使用して行う伐木の業務
- 安全帯を使用して行う伐木の業務
- 伐倒の際に危害を及ぼすおそれのあるあばれ木又は空洞木の伐木の業務
- 重心が伐倒方向に対して著しく偏在している木の伐木の業務
- かかり木となるおそれのある木の伐木の業務
- かかり木の処理の業務
<参考>
災防規程 第35条(くさびの使用)
会員は、チェーンソーによる伐木の作業を行う場合において、伐倒しようとする立木の重心が偏しているもの、あるいは、胸高直径が20 センチメートル以上のものを伐倒しようとするときは、作業者に、くさびを2本以上用いること等立木が確実に伐倒方向に倒れるような措置を講じさせなければならない。
林業における死亡災害は、チェーンソーに起因するものの割合が6割に達しており、適切な方法で伐木等作業が行われるよう「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン(平成27年12月7日付け基発1207第3号)」が厚生労働省労働基準局長から発出されているので、チェーンソーによる伐木等作業に当たっては、このガイドラインを遵守する必要がある。