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災害事例研究 No.91 【林業】

伐倒木が予定した方向と違う方向に倒れ、伐倒作業者又は近くにいた別の作業者に伐倒木が激突

 今回は、東海・北陸ブロック管内において発生した5事例を紹介します。
これらは、チェーンソーによる伐倒作業で基本事項を守らなかったことにより、伐倒木が予定した方向と違う方向に倒れ、伐倒作業者又は近くにいた別の作業者に伐倒木が激突する災害が発生しています。これらの労働災害の原因を検証し、その防止対策について掲載します。

事例1

casestudy091_1 切り捨て間伐作業にあたり、間伐対象木(直径20数センチの小径木)を地際より1.2mの高さで斜めに切ったところ、伐倒方向が変わりかかり木となり、かかり木を外そうとしたところ、伐倒中の被災者に激突した(推察)。

【対策】
小径木であっても、伐倒方向に受け口を切り、追い口切りを行って伐倒すること。
後述の※伐倒における基本的な対策事項の
1 受け口切りの基本
2 追い口切りの基本
を遵守すること。

事例2

casestudy091_2 かかり木になったので、チルホールを取りに移動したところ、かかり木が思わぬ方向へ落下し、跳ねた材が被災者に激突した。伐根は、追い口を切り込み過ぎて「つる」が残っていない状況であった。

【対策】
後述の※伐倒における基本的な対策事項の
2 追い口切りの基本
を遵守すること。

事例3

casestudy091_3 隣接木と枝絡みとなっている木を伐倒中、絡んでいた枝が途中で折れ落下し、伐倒者より2 . 6 m後方に片づけのため待機していた同僚に激突した。
 伐根は、部分的に腐っており「つる」が効かず勢いよく倒れたと推察される。

【対策】
後述の※伐倒における基本的な対策事項の
3 伐倒作業の立入禁止区域
4 腐れ、空洞木の伐倒の留意点
5 枝がらみの木の伐倒の留意点
を遵守すること。

事例4

casestudy091_4 枯れたマツの伐倒作業中、チルホールで引いていた被災者が、伐倒木が倒れる方向に逃げたため、伐倒木に激突された。
 伐根は、部分的に腐っており「つる」の効果は減殺され、勢いよく倒れたものと推察される。

【対策】
後述の※伐倒における基本的な対策事項の
3 伐倒作業の立入禁止区域
4 腐れ、空洞木の伐倒の留意点
6 伐倒方向を規制する場合の留意点

事例5

casestudy091_5 同僚と二人で伐倒作業中、伐倒木が風にあおられて予定した方向と異なる方向に倒れ、約11 m離れた場所で玉切り作業をしていた同僚に激突した。
 伐根は、追い口を切り込み過ぎて「つる」が残っていない状況であった。

【対策】
後述の※伐倒における基本的な対策事項の
2 追い口切りの基本
3 伐倒作業の立入禁止区域
を遵守すること。

※ 伐倒における基本的な対策事項

 前述した5事例について、伐根から推測した伐倒作業における基本的な対策事項をまとめました。

  1. 受け口切りの基本

    ア 受け口の深さは、根張りを除いた伐根直径の4分の1以上(大径木の場合は3分の1以上)とすること。

    イ 受け口切りは、30 度から45 度の角度とし、受け口の下切りと斜め切りの切り終わりの部分は必ず一致させること。
     受け口切りは、木が倒れる際に重要な役割を果たす「つる」を壊さないための空間を確保するために行うものであることを認識すること。

  2. 追い口切りの基本

    ア 追い口は、受け口の高さの下から3分の2程度の位置を水平に切り込むこと。

    イ 「つる」は伐根直径の10分の1程度残すこととし、絶対に切り込み過ぎないこと。

    エ 腐れ等でクサビを使えない場合を除いて、伐倒方向を確実にするためにクサビを使用すること。

  3. 伐倒作業の立入禁止区域

    立木を伐倒する場合には、立木の樹高の2倍以上の距離の範囲内に他の作業者を立ち入らせないこと。

  4. 腐れ、空洞木の伐倒の留意点

    ア 一般的には、受け口は浅く、角度は大きめに取ること。

    イ 追い口は普通の高さより高めとし、腐れ、空洞の部分で減殺されるつる機能をカバーすること。

    ウ 「追いづる切り」の方法は確実さが増すので、状況に応じて追いづる切りで伐倒すること。

  5. 枝がらみの木の伐倒の留意点

    ア 枝がらみの木が斜面の上下に位置している場合は、下の木から伐倒すること。
    また、枝がらみの木が斜面の左右に位置している場合は、細い方の木から、枝がらみの反対方向へ倒すこと。

    イ 受け口は深め、追い口は高め、クサビを打つときは慎重に行うこと。

    ウ 枝がらみの木は、枯れ枝や折れた枝が飛来・落下することがあるので、上方を十分確認しながら作業を行うこと。
    また、伐倒後に退避場所から出るときも、落下物、飛来物に注意すること。

  6. 伐倒方向を規制する伐採の留意点

    ア けん引する場合は、ガイドブロックでけん引方向を変える等、安全で確実な作業方法とすること。

    イ チェーンソー作業者とけん引者は、事前に作業手順、退避場所及び合図等について打ち合わせをするとともに、作業中はお互いに連携を図り、引っ張りすぎないようにすること。

    ウ 伐倒方向を確実にするため、クサビを用いること。