メニュー

災害事例研究 No.95 【林業】

伐倒木をつかんだグラップルが被災者側に旋回し、広葉樹が頭部に激突

 被災者はチェーンソーにより伐倒木の枝払いを行っていたところ、右側方向約10メートル離れていたグラップルが伐倒木をつかんで被災者側へ旋回したときに、つかんでいた広葉樹(シラカバ、胸高直径27センチメートル、長さ15.8メートル)が被災者の右側頭部に激突した。

災害の発生状況

 災害発生当日は責任者、グラップル運転者、被災者を含むチェーンソー作業者2名、計4名で作業を行っていた。
 責任者だけが土場でグラップルによる玉切作業を行い、被災者等3名は50メートルほど離れた地点で作業を行っていた。
 作業は、あらかじめ伐倒しておいた木のうち、枝が下側となって倒れたり、雪に埋もれたりして枝払いのできなかった木の側面が上になるようにグラップルで4~5本並べ、チェーンソー作業者2名が枝払い作業をしていた。
 ある程度の数量に達したら、交替してブルドーザーで土場に搬出するという作業を移動しながら繰り返し行っていた。
 午後2時40分頃、被災者等4名は災害発生地点に移動し、1回目として5本の木の枝払いを終えた。
 午後2時50分頃、枝払いが終わった1回目の5本の木をグラップル運転者がグラップルで移動させ、その場所に次の枝払い対象木の移動を始めた。
 同運転者がグラップルで4本目の木を置き、5本目をつかんで旋回させたところ、チェーンソー作業員2名はすでに枝払い作業を開始していたことに気づき、同運転者は急いでグラップルの旋回を止めたが、ブームが止まらず、木が振れてしまい、被災者の右側頭部に激突した。
casestudy095

災害の発生原因

  1. 伐木等機械作業による危険区域内への立入禁止が徹底されていなかったため、被災者はグラップルでつかんでいた木の旋回範囲内で作業を行ったこと。
  2. 枝払い作業者とグラップル運転者がそれぞれの判断で作業を実施したこと。
  3. グラップルのブームの旋回動作が速く、急停止しても木の振れが大きかったこと。
  4. 枝払い作業における作業手順が作業者に徹底されていなかったこと。
  5. グラップルの作業計画が作成されていなかったこと。

災害の防止対策

  1. グラップルを使用して作業を行うときは、グラップルのブーム、アームの伸ばした距離の2倍を半径とする円の範囲内は、他の作業者を立入禁止とし、グラップルでつかむ木の長さも考慮して立ち入り禁止区域を決定すること。
  2. また、状況により誘導者の配置についても検討すること。
  3. 枝払い、グラップルの運転を開始するときは、お互いに合図をかわし、相互の次の作業内容を確認すること。
  4. 作業種別ごとに作業手順を取り決め、関係作業者に徹底すること。
  5. 作業前に、あらかじめ地形等を調査し、その結果に対応するグラップルの作業計画を作成し、かつ、その作業計画により作業を行わせること。

<参考>

『労働安全衛生規則』

 (接触の防止)
第151条の95 事業者は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、運転中の車両系木材伐出機械又は取り扱う原木等に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせてはならない。

『林業・木材製造業労働災害防止規程』

 (立入禁止)
第70条 会員は、車両系木材伐出機械を用いて作業を行うときは、運転中の車両系木材伐出機械又は取り扱う原木等と接触のおそれや飛来、落下等の危険が生ずるおそれのある箇所に作業者を立ち入らせてはならない。
 (立入禁止)
第83条 会員は、伐木等機械(フェラーバンチャ、ハーベスタ、プロセッサ、木材グラップル機等をいう。以下同じ。)による作業を行う場合には、次に掲げる場所に、作業者を立ち入らせてはならない。
 ⑵  作業中の伐木等機械又は扱っている原木に接触するおそれのある箇所
 ⑷  造材作業中は、運転席からブーム、アームを最大に伸ばした距離の2倍以上を半径とする円の範囲内と原木を送る方向