災害事例研究 No.9 【林業】
サクラを伐倒したところ、近くにあった根腐れのヤナギが倒れ、伐根と倒木に挟まれた
ヤマザクラとオオバヤナギが枝絡みの状態になっている場所で、危害防止のための事前処理をしないままでヤマザクラを伐採したところ、枝絡みのオオバヤナギが伐木中の作業者側に倒れ、退避が遅れた作業者が伐根と倒木に頭部を挟まれ、頭蓋骨骨折で死亡した。作業前には作業準備と作業打合せを行ったが、現場責任者からの安全に関する指示はなかった。
災害発生の状況
作業者3名は、自動車1台に同乗して午前7時10分に現場に到着した。その後、全員で作業準備と作業打合せを行ったが、現場責任者からの安全に関する指示はなかった。
午前中の作業は、チェーンソーによる伐木、チェーンソーによる枝払い、グラップルの操作を午前11時過ぎまで分担して行った。作業中の天候は降雪であった。
午後0時30分から午後の作業に着手し、午後の作業時は晴れていた。
午後も同じ作業分担で行われたもので、被災者は午後2時30分頃に作業場所の近くの道端に移動して、約10分、ソーチェーンの目立てを行った後、再び伐木作業を行っていた。
その後、被災者のチェーンソーのエンジン音が10分程聞こえてこない状況に気付いた同僚作業者2名は作業を中止し、被災者のいる作業場所を見に行ったところ、被災者はヤマザクラの伐根とオオバヤナギの倒木に頭部を挟まれ、顔面から出血した状態で発見された。
直ちに自動車に戻り、携帯電話で会社に事故を通報した。会社では救急車を手配し、現地に向かう社有車も救急車と合流して現場に到着し、被災者を病院に収容したが、頭蓋骨骨折により死亡した。
災害発生の原因
ヤマザクラと根腐れしたオオバヤナギが枝絡みの状態にもかかわらず、危害防止のための事前処理をせず、ヤマザクラを伐倒したところ、枝絡みのオオバヤナギが伐木中の被災者側に倒れかけたが、被災者の退避が遅れ、伐根と倒木に頭部を挟まれた。
災害防止対策
- あらかじめ、作業現場の事前調査を行い、伐倒木の状況、枝がらみ、つるがらみ、隣接木、地形の状況などの調査結果に基づき、素材生産・安全作業の作業計画を定めること。
- 現場責任者は当該作業計画を作業者に周知したうえで、作業計画に基づいて作業を行わせること。
- 伐倒前に、伐倒木及び作業場所の周囲の状況を十分に観察して、根腐れ、枝がらみ、つるがらみなどを把握したうえで、伐倒時の安全な作業方法・手順を定め、当該作業方法・手順を確実に遵守すること。
- 枯木・根腐れ木などで倒木等の危険の恐れのあるものについては、必ず事前に危害防止処理をすること。
- あらかじめ伐倒に伴う退避場所を適切・確実に定め、伐倒木が傾き始めたら直ちに退避すること。
- 危険感受性の意識高揚と危害防止のための安全衛生教育の実施、伐倒木及びその周囲の状況に応じた適切な作業方法・作業手順、退避などに係る「伐木等の業務従事者安全衛生教育」を受講させること。