災害事例研究 No.99 【林業】
後退してきたショベルローダーに轢かれて死亡
木材チップ製造工場のヤード内に停車していたトラックの運転手が、車外に出ていたところ、後退してきたショベルローダーに轢かれて死亡した。
災害の発生状況
- 災害発生現場は、木材製造業に該当する木材チップの製造工場内のヤードであり、日常的にチップの積込み作業をするショベルローダーとチップを積んだトラックが動き回っている。ショベルローダーの最大荷重は2トンで、トラックの最大積載量は4トンである。事業場の規模は常時労働者を15人程度雇用している。
- チップは、木材を細断してベルトコンベヤーで運ばれ、チップ置き場に落とされて貯蔵される。それをショベルローダーですくい取って、トラックの荷台に積込み、注文先に届けるようになっていた。
- 被災者は、ヤード内にトラックを運転し停車した後、理由は不明であるが車外に出てトラックからは離れていた。ショベルローダーの運転手はトラックが停車しているのは認識していたが、その運転手は車内にいるものと思い込んでおり、いつものとおりショベルでチップをすくい取り、後退運転をしていたところ、ぶつかったようなショックを感じてショベルローダーから降りて確認したところ、被災者を後輪で轢いたことが分かり、救急車で被災者を病院に運んだが内臓破裂等で死亡した。
災害の発生原因
- ショベルローダーの運転手が労働安全衛生法で定める技能講習を未受講であったこと。
- ショベルローダーの運転手が後方をよく確認していなかったこと。
- ヤード内での作業員の行動について安全教育が不十分であったこと。
- 構内における作業計画及び制限事項を定め、周知していなかったこと。
- 安全衛生推進者を選任して必要な事項を担当させていなかったこと。
- 危険予知活動を実施していなかったこと。
- ヒヤリハット報告とそれに基づく改善提案活動をしていなかったこと。
- 上記7の情報等により、リスクアセスメントを実施していなかったこと。
災害の防止対策
- 最大荷重が1トン以上のショベルローダー(荷役機械:二輪駆動に限る)の運転の業務については、「ショベルローダー等運転技能講習」を修了した者を就けること。
ただし、ショベルローダーの形態をした四輪駆動のトラクター・ショベルについては、「車両系建設機械」に該当するので、車両系建設機械運転技能講習の受講が必要である。 - 運転手は後方確認をしながら運転をすること。
- ヤード内での作業員の行動について、立入禁止区域を定める等の労働災害を防止するための安全教育を実施すること。
- 「車両系荷役運搬機械等」に該当するショベルローダーを用いて作業を行う場合は、作業計画及び制限速度を定めて、それにより作業を行うこと。なお、「車両系建設機械」に該当するトラクター・ショベルについても同様であること。
- 安全衛生推進者を選任して、法で定める危険を防止するための措置、安全のための教育の実施などに関する業務を担当させること。
- 危険予知活動を実施して、作業員の危険予知能力を高めること。
- ヒヤリハット報告とそれに基づく改善提案活動を実施すること。
- 上記7の情報等を活用して、リスクアセスメントを実施すること。
◆関係法令参照条文◆
〇 就業制限(ショベルローダー運転技能講習修了者に制限)
「労働安全衛生法」第61条
「同法施行令」第20条第13号
〇安全衛生推進者等の選任とその職務
「労働安全衛生法」第12条の2
「同法施行規則」第12条の3
〇作業計画、制限速度
「 労働安全衛生法」第20条第1項
「同法施行規則」第151条の3(作業計画)
第151条の5(制限速度)