災害事例研究 No.100 【林業】
伐倒方向が変わった伐倒木が高く切られた切株に当たり、そのはずみで伐倒木の根元が跳ねて被災者に激突
予定していた伐倒方向が変わった伐倒木が、枝条を止めるために高く切られた切株に当たり、その反動で根元が跳ね上がった伐倒木が被災者に激突、被災者は後方の立木との間に挟まれた。
災害の発生状況
- 被災者は、同僚2名と傾斜37度の急斜面で皆伐の伐倒作業に従事していた。伐木箇所は下方に林道があるので、林道に伐倒木が滑落しないように、上方から45度の斜め上方向に倒すべくチェーンソーでスギ立木(直径35cm、樹高18m)の伐倒作業をしたところ、予定した伐倒方向が変わり、枝条を止めるために高く切られた切株(高さ1.5m)に伐倒木が当たり、そのはずみで根元が跳ねて被災者に激突し、被災者は後方の立木との間に挟まれ胸を強打した。
災害の発生原因
- 受け口の方向が伐倒予定方向に向いていなかったこと。
- くさび(2本)は使用されていたが、つる幅が不十分であったこと。
- 伐倒木の周辺に枝条を止めるために高く切られた切株があったこと。
- 退避が不十分であったこと。
災害の防止対策
- 受け口は、伐倒方向に確実に向くように作ること。なお、チェーンソーのガイドバーを受け口に合わせると、ガンマークの方向が受け口の向いている方向となるので、このガンマークで受け口の方向を確かめることにより、意図する伐倒方向へ倒すことができること。
- 上方向への伐倒は起こし木になるので、つるの強度を確保するため、つるの幅は伐根直径の10分の1程度を目安とし、切り込みすぎないようにすること。
- 伐倒したとき接触して跳ね返るおそれのある、枝条を止めるために高く切られた切株を放置することは、リスクの高い伐倒作業になることから、できるだけ事前に伐倒処理するなどの作業方法を選択すること。
なお、枝条止めは伐根を併用せず別途杭止めをすること。 - 退避は、追い口が浮き始めたら、前もって決めてある3m以上離れた退避場所へ直ちに退避すること。
本災害事例は、①下方に林道が敷設されているため、伐倒方向を上方から45度の斜め上方に伐倒する方法を選択したことと、②傾斜37度の急斜面ということで切株が残されていた。本件の斜め上方の伐倒は、前述のとおり起こし木になるので、熟練者が細心の注意を払って作業を進める必要がある。
< 参考 >
上図のように林道に表示して、立入を禁止すれば伐倒方向を上方に制限しなくてよい。